「QUIET LIFE」(SAKURA RECORDS JMCK−3003)
KIDO NATSUKI
今でこそキキバンドその他でおなじみすぎるぐらいおなじみに日々接することの多い怒さんのギターだが、鬼怒さんの演奏にはじめて触れたのはご多分に洩れずボンデージフルーツである。そのときから、鬼怒さんがこういったタイプの音楽を内包していることは、たぶんわかっていたように思う。そして、本作はやっぱり、というか、案の定というか、傑作になった。どの曲も、選曲に細心の注意が払われていて、それがギターミュージックとして最上の状態で表現されている。私はどちらかというと、ギタリストがギターという楽器に淫したようなギターミュージックには否定的というか、うっとうしい、うざい、腹たつ、疎外感がある……と思ってしまうタイプだが、これはハートがキュンとなった(めっちゃ古い表現)。買ってから何遍聴いたかなあ。今では鬼怒さんというと本盤を思い浮かべてしまうほどの愛聴盤である。とめどなく繰り出される音の波にただただ陶然としてたゆたっている快感がこれほど味わえる演奏も珍しいが、ふと我に返ってたとき、ギターという楽器の表現力と、それを操るミュージシャンの自己を律するすごさに慄然とする。