「FLOWERS AND WATER」(EWE RECORDS EWCD0159)
NARUYOSHI KIKUCHI HIROSHI MINAMI
すごく楽しみにしていたのだが、聴いてみると、なんだかすーっと流れていって、なにも手元に残らない。おかしいなと思って二度目に聴いて、なんとなく少しわかったのは、このアルバムは聴き手がかなり真剣に対峙しないと、水みたいに流れていってしまってつかまえらないということだ。というわけで3回目に至って、相当手応えを得た。深い演奏だ。菊地のサックスが、淡々とサキソホンという楽器のいちばん淡く、透明な部分をアピールする。これはじつはめちゃめちゃうまくないとできないことで、音楽的にも技術的にもかなりの高みにいるからこそ可能なのだ。演奏される曲もそれぞれに興味深いのに、なぜか通して聴くと、ひとつひとつがあまり主張せず、「全体でひとつの曲」のように聞こえるのは確信犯なのか。4回目、5回目……とどんどん気持ちよくなってきて、いまではすっかり愛聴盤であります。