「BLUES’N’JAZZ」(MCA RECORDS MCA5413)
B.B.KING
要するにアーネット・コブがゲストで入っているので買ったわけです(なぜかウディ・ショウも参加していたりする)。だが、コブはちょろっとソロを吹いているだけなので、BBキングのファン以外は、よほどの好事家でないかぎり買わないでもいいと思う(コブは「リード・テナーサックスとクレジットされているので、アンサンブル部分もリードを吹いているのかも)。でも、私にとってはコブのこのめちゃかっこいいソロがじつにうれしい。BBキングのアルバムに参加している、というだけでうれしいのだから、単純なファン心理であるうえ、その短いソロがなんともいえない、気合い入りまくりの珠玉の演奏なのである。コブにとってもBBにとっても、さほどの傑作ではないと思うが、個人的に捨てがたい作品なのです。ところで、クレジットにある「ドナルド・ウィルカーソン(サクソホン)」というのは、あのドン・ウィルカーソンのことなのだろうか。
「LIVE AT THE REGAL」(MCA RECORDS 18P2ー3028)
B.B.KING
かっこええ。数あるBBのアルバムのなかでも屈指のかっこよさだと思う。私のようにブルーズはよく知らないものにとってもめちゃくちゃわかりやすくて、はまる。しかし、この洗練はどういうことだ。マディのニューポートが1960年ですよ。サニーボーイのダウンアンドアウトブルーズが58年ですよ。ブルーズという音楽はたった4、5年でこんなにもかっこよく、洗練されたものになってしまったのだ。マディもサニーボーイもハウリン・ウルフもオーティス・ラッシュもマジック・サムも……みんなすごいしかっちょええけど、こういう感じの洗練はない。このBBのライヴは、「商品」として世界中のどんなひとでも楽しめるクオリティがある。シャッフルだけ叩けるのではなくどんなリズムでも叩け、適格に盛り上げまくることのできるドラム、ダイナミクスから音程からソロから……なにもかも心得た感じの3管のホーンセクション、ピアノだけでなくオルガンも弾けるキーボード奏者、そして、すべてをわかっていてどっしり構えているベーシスト……完璧な(大観衆相手の)プロの仕事である。そして、女性客の歓声がすごい。ちょっとしたフレーズにも反応して「うぎゃーっ」と叫ぶ。このBBの演奏といわゆるシカゴブルーズとのあいだの差異はなんなのだ。この聴きやすさが、いささかもブルーズとしての根源的なものを削いでいないところがBBのすごいところである。このギターがソロを弾き出すと、それだけでバンドが宇宙にまで飛んでいくようなこの昂揚はなんなのだ、と思うが、それこそがBBのブルーズマンとしての、スターとしての「力」であり「才能」なのだろう。「間」と「ダイナミクス」だけでここまで高みにのぼれるのだ。スクィーズひとつとっても、ブルーズファンでない人間をも、「あー、これはかっちょええわー」と陥落させてしまうだけの凄みがある。そして、このボーカル! これもまた天性のものなのだろうな……と思う。ギターとボーカルの相乗効果はそれこそ圧倒的な魅力を聴衆にぶつけたと思う。いろいろな意味で、天が二物も三物も与えたBBキングの、数ある作品のなかでも「傑作」としか言いようがないアルバムに私ごときがなにを言おうか……という感じである。本当に素晴らしい。