「BOOK FROM HELL」(DOUBT MUSIC DMF−134)
ZAI KUNING+OTOMO YOSHIHIDE+DICKSON DEE
だから、ザイ・クーニンってだれやねん? という私の不安をもののみごとに粉砕してくれた最高の内容。どう説明していいかわからないが、とにかくインプロヴィゼイションが好きならぜったいに聴いてほしい。これがアジアの即興だ、という言い方は、合っているのかまちがっているのかわからないが、そう言いたくなる。いろんな音楽の要素が混じりあっているとは思うが、そのなかにははっきりとアジアンテイストの音の流れというか音列みたいなものが感じられる……ような気がする。もうひとりの
のヴォイスもすごくて、ときには読経のような、ときには声明のような、ときには呪文のような、ときにはバップスキャットのような変幻の「言葉」をぶつけてきて、それがまた刺激的なのだ。ガムランみたいなところもあるし、めくるめく速さで場面が変わっていく、というよりも、もっとゆったりと落ち着いて、しかも確実に変化していく……そんな感じの即興だ。やはり、大友の参加が核となって、こういう立体的でまとまりのある、しかも破綻をつねに感じさせるようなすばらしい演奏になっているのだろうと思った。いつも、知らないひとの演奏にはじめて接するときは不安半分期待半分だが、正直これにはびっくりした。70分を越える演奏で、CD上は「一曲」として扱われていることにも驚いた。うちのCDデッキでは、これでは飛ばし聴きができないので、途中でとめたら、つぎはまた最初から聴き直さなければならない。これはまいった。3回チャレンジして、結局途中までしか聴けず、4回目ではじめて全編通して聴けた。でも、全然飽きないし、ダレない(まったりする部分はあるのだが、ダレているのではない)。近々、5回目に挑戦したい。