fela anikulapo kuti

「ZOMBIE」(PHONOGRAM SRM1−3709)
FELA ANIKULAPO KUTI AND AFRIKA 70

 フェラ・クティを好きなひとは多いと思うが、私は最初さっぱりわからなかった。学生時代のことで、先輩のテナー吹きの下宿で徹夜マージャンをするときに、そのひとがいつもかけていたので自然と聴き習わされてしまったのだ。しかし、テナーサックス的にはフェラ・クティというひとはかなり下手だと思う。アメリカの音楽学校に在籍していたというのだが、ほんまかいなと思うぐらいである。そのことがネックになって、最初は「なんじゃこれ」という感じだったのだが、こういうファンクはしつこく聞き返すことによってだんだんそのよさがわかってくるのだ。もちろん、一回聞いただけでかっけーっというファンクもあるが、フェラ・クティはじわじわ来るファンク。卒業後も、ときどき急に聞きたくなったりして、深夜に酔っぱらったときにレコードを出してきたりする。フェラ・クティはソロもかなり変態的というか、つっかえつっかえのぎくしゃくした吹き方で、本作でもトランペットのひとのソロのほうがずっとジャズ的には上手い。しかし! そういう問題ではないのだ。このアフロビートが延々奏でるリズムのうえでフェラがボーカルを取り、コーラスがそれを繰り返し、ホーンセクションがファンクネスをあおる。それがずっと続く。ダンスミュージックであるが、プロテストミュージックでもある。テナーの音色がへろへろだろうと、ソロがぎくしゃくしていようと、そんなことは関係ない。この情熱! 何度国家に逮捕されようと、反対するひとたちに非難されようと、ひたすら「音楽」でプロテストを続けたのだ。これは正直、よくわからん点もあるが、純粋に音楽として聴こうとしても、なかなかそれを許さない……というファンクである。政治的なことが濃密にぶちこまれており、それを「関係ないね」と言う聞き方を許さないような演奏だと思う。でも、このひとの言動は一筋縄ではいかず、ある意味、サン・ラ的なところもあるような気がする。折に触れて聴いてしまうアルバム。