「SEACH FOR TOMORROW」(ENJA & YELLOWBIRD RECORDS CDSOL−46474)
PRINCE LASHA
プリンス・ラシャのことはよく知らない。「アイアン・マン」はもちろん聴いたことがあり、ソニー・シモンズとのコラボでは「クライ!」と「ファイアバード」も聴いたことあるけど(どっちも持ってないけどすごく面白かったような記憶あり)、リーダー作となると1枚も持ってません。で、廉価版が出たのをよい機会にこのライヴ盤を聴いてみた。ヒューバート・イーヴス、ロン・カーター、ロイ・マッカディ……とメンバー的には(今考えると)かなり豪華である。曲も演奏もいかにも74年、という感じである。1曲目はラシャ(司会は「ラシェ」と発音しているようだが)のフルートが哀愁のメロディをルバート的に奏でる。ファラオ・サンダースのインパルス作品あたりとも共通する雰囲気である。インテンポ(4ビート)になり、パーカッションのぽこぽこという音も楽しい。しかし、ラシャのフルートソロはすぐ終わってしまい、そのあとのイーヴスのピアノソロやロン・カーターのベースソロ(ベースソロにパーカッションがからんでくるあたりとか)の方が印象に残る。2曲目はラシャのソプラノで開幕するミディアムテンポのモード曲で、1曲目と似た印象(テーマらしいテーマはないように聞こえるが……)。ラシャのソロ(?)は一瞬で終わり、そのあとイーヴスのソロになり、このソロがなかなかかっこいいのだが、なぜかソロが盛り上がってくるあたりでラシャが割り込むようにソロをはじめるように聞こえる。なんでや? 結局、ラシャのソロになるのだが、トリルを多用したかなり強引な演奏。そして、ドラムソロからパーカッションソロ。ここは手堅い。しかし、そこにまた割り込むようにソプラノが入ってくるとまたまたぐしゃぐしゃになり、それはそれで面白い。ラストの3曲目はバリトンで、結局このアルバムでラシャはアルトを吹いていないのである。明るいラテン風の曲調なのだが、ラシャのバリトンソロはかなりというかめちゃくちゃ奔放で、ぐちゃぐちゃっと団子状にしたような感じなので、相当長い尺のソロをしているのだがかえって印象に残らない。不思議なひとである。そのあとのちゃんとリズムに乗ったピアノソロの方がずっと印象深い(パワフルで、外したり戻したり自在で、ノリノリで、すごくかっこいい)。まるでヒューバート・イーヴスのリーダー作のようである。最後にバリトンが朗々とカデンツァを吹くのだが、ここはすばらしい。3曲続けて聴いてみると、3曲ともラシャの作曲で、リーダーでもあるのだが、なぜか彼のソロは音色的にもフレーズ的にもあまり記憶に残らず、ほかのメンバーのソロの方が記憶に残るという不思議なひとである。そしてまた、こういうひとがちゃんとリーダー作をいくつも残せる、というのがジャズの面白いところであり、ソロは印象薄くても、全体としてはやはり「プリンス・ラシャの音楽」としか呼びようのない世界になっているのだ。不思議不思議。