「THE SEEKER」(SUNNYSIDE COMMUNICATIONS SSC1392)
AZAR LAWRENCE
トランペットにニコラス・ペイトン、ドラムにジェフ・ワッツを擁したエイゾー・ローレンスのクインテットによる2011年のライヴ。1曲目のイントロとテナーによるテーマを聴いて即購入。かなり荒っぽい、ある意味雑な演奏なのだが、その荒さも含めてめちゃめちゃええやん。こういうコルトレーン直系のテナー奏者のなかには、どんなにエグいフレーズを吹きまくろうと、ちゃんと音色やタンギングや音の出し方など、ソロの隅々にまで繊細に気が配られているひともおり、逆にグロスマンのようにそういうことにはあまり意を払わないひともいる。どちらも魅力的だが、ローレンスはどちらかというと荒いほうだと思う。音量の変化もほとんどなく、ずっと同じぐらいの感じなのだが、そういうことも含めて、この「雰囲気」なのだと思う。ああ70年代ジャズ。モーダルジャズ。私が一番好きなジャズなのです。曲も、ええ曲書くなあ。1曲目のインド風の曲のタイトルはずばり「ガンジー」。2曲目のまさに70年代モード風の曲は「ロスト・トライブス・オブ・レムリア」で、大げさというか「ムー」的というか。3曲目のタイトル曲はソプラノで演奏されるが、これも決して上手いとはいえないが、味わいのあるソプラノで好ましい。ペイトンのトランペットも、ウディ・ショウというよりはハバード的な派手でやや大味なものだが、これもよくはまっている(とくにドラムとの相性抜群)。ピアノのひと(ベニート・ゴンザレス)もいいが、なによりもジェフ・ワッツのドラムが凄くて、全体をプッシュしまくっている。ローレンスも昔、マイルスのグループにいたころはけっこう酷評されていたような気がするが、こういう直情的なモーダルなテナーは、心情的にめちゃくちゃ好きだ。「ダーク・メイガス」だけ聴いて、ダメだと決めつけるのは早計すぎる。マッコイやエルヴィンなどのグループでもがんばっていたし、最近は成熟したような、やんちゃなような、スピリチュアルなようなアルバムをぼつぼつ発表していて私は応援しています(私に応援されても困るだろうが)。なぜ好きかというと、やっぱり一番70年代を引きずっているように聞こえるからかもな。70年代ジャズで活躍していたテナーマンのうち、リーブマン、グロスマン、ブレッカーの3大巨頭はもちろんだが、たとえばえーと……ボブ・バーグ、カーター・ジェファーソン、ジョー・ヘンダーソン、ビリー・ハーパー、ルネ・マクリーン、デイヴ・シュニッター……などなどのなかでも、もっとも愚直で「これしかおまへん」的な演奏を今も行っている稀有な存在である。4曲目はピアニストの曲だが、ほかは全曲ローレンスのオリジナルで、めちゃめちゃ意欲的やん。なぜかフェイドアウトが多いのも特徴。ローレンスはまだ61歳(のはず)。当分、この路線でガンガンいってほしい。しかし、昔から疑問に思っていたのだが、AZARというのはエイザーじゃなくてエイゾーと読むんですね。