「LOCAL COULOUR」(ESP−DISK ESP1057)
PETER LEMER QUINTET
こういうの、全然知識がないのだが、ESPにこんなアルバムがあるとはじめて知った。たまたま中古で買ったのだが、68年の録音で、リーダーのピーター・レマーというピアニストはイギリスのひとでキーボード〜シンセ奏者としてはめちゃくちゃ有名らしい。本作は、ジョン・サーマンとテナーのジョージ・カーン(ニザー・アーメッド・カーン)の2フロントで、ポール・ブレイの曲を1曲やっているほかはすべてこのひとのオリジナルである。ネットで調べてみると、このアルバムはイギリスのフリージャズムーブメントの道を切り開いた……とあるが、聴いてみるとなるほどと思う。ニューヨークに渡って、ポール・ブレイやジャッキー・バイアードに師事したというが、本作を聴いてみると、たしかに硬質でカクカクした雰囲気のフリージャズで、いや、フリージャズというか、普通の「けっこうエグいジャズ」ぐらいの感じで、たとえば同じESPでいうとシェップやファラオやアイラーやなんやかやが残したものとは明らかに違う手触りである。この演奏がブラックミュージックとしてのフリージャズからヨーロッパのフリージャズへの橋渡しになった、というのはよくわかる。というのは、全体にブルーズ的なものが注意深く取り除かれ、「自分たちの表現」ということを強く押し出しているからだと思う。ジョン・サーマンのバリトンはもちろんのこと、かなり面白い経歴の持ち主であるジョージ・カーンの演奏もすばらしいし、このアルバムの核になっているようにも思える(このひとのことはよく知らなかったけど、調べてみるとイギリスのフリージャズのパイオニア的存在なのですね。かなりエグい実験的な演奏をしているひとのようです)。リーダーのコンポジションも、セシル・テイラー的な表現もめちゃくちゃかっこいい。曲も多様で、過激なハードバップ的なものもあれば現代音楽的なもの、完全にフリージャズな感じのものなどさまざまでバラエティに富んでいる。そして、リーダーのピアノが全体を覆いつくしている。だれかがソロをしているときもずっと自分のソロのように弾きまくっている。これはセシル・テイラー的とかいうことよりも、とにかく若さとやる気があふれまくっている。ほかのメンバーも同じで、ベースにしろドラムにしろ、なんというか意欲があふれでている感じで、それを体感するだけでもう感動する。正直、ジョン・サーマン目当てで買ったのだが、全員すばらしかった。日本もこのころ、こうだったよね。傑作。