ted levy

「GOOD PEOPLE」(RESERVOIR MUSIC RSR−105)
TED LEVY

 テッド・レヴィといえば実力派のテナー奏者で、こういうジャズにはかなりうとい私でも名前を知っており、このレーベルやスティープルチェイスなどに多数のリーダー作を録音している大物だが、どうしてこのレコードを持っているのかまったく覚えていない。しかも、ジャケットにはBEST WISHES TO HIROFUMI TANAKAと宛て名入りのサインまで書かれている。といって、ライヴに行った記憶はない……というか絶対行ってない。というわけでどういう経緯でこのレコードを私が持っていて、そこにサインが入っているのか、はわからないのだが、内容はとてもいい感じ。ビリー・ハート、ルーファス・リードという重量級のリズムセクションに支えられ、このレーベルでの諸作をはじめ多数のリーダー作を残しているギターのピーター・レイチやリーダー作以外にも膨大なアルバムにサイドマンとして参加しているピアノのピーター・マドスンを得て、鉄壁の布陣。きわめて上質のモダンジャズだとは思うものの、正直、私が聞くようなタイプの音楽ではないので、やっぱりどうしてこのアルバムが手許にあるのか不思議だ。1曲目はアップテンポで軽快にスウィングするスタンダードで、レヴィのリラックスしたように聞こえるがじつはかなりテンション高いロングソロやギターソロが聞きどころ。2曲目はバラードで、かなりモダンな雰囲気。3曲目もハードバップというよりもっと新しい、たとえばウディ・ショウやジョー・ヘンダーソンといった70年代の演奏に通じる硬派なものでかっこいい。ギターも大活躍している。B面に行って、1曲目はアップテンポのモーダルな曲調の曲で、ギターソロが爆発し、レヴィもゴリゴリのコルトレーン的なフレーズを熱く重ねていく。ビリー・ハートのドラムソロも聴ける。本作の白眉といっていい演奏。2曲目はビリー・ストレイホーンの「デイドリーム」で、A−1とこの曲を除くと全部レヴィのオリジナルである。前曲とはうってかわって、ギターとのデュオでしんみりとはじまる。もっとクールというか辛口のバラードかと思ったら、けっこう叙情味のある演奏ですばらしかった。テナーとギターのからみがいいですね。ラストの3曲目はこれもシリアスでスペーシーっちゅうんですか、なんかそんな雰囲気を持ったモーダルな曲で、ルーファス・リードのベースソロが大きくフィーチュアされ、そのあとテナーとベースが延々と絡み合うのだが、ここはめちゃくちゃかっこいい。かなり凝った構成の曲で、フリーバラード風になったり、モードジャズ風になったり、サンバっぽくなったり……と面白い。ギターソロもすばらしく、テナーのときと同じく、ベースとのからみが聞きものである。聴き終えて、あー、モダンジャズを聴いた、というええ感じの充実感のある傑作である。