john lindberg

「GIVE AND TAKE」(BLACK SAINT BSR 0072)
JOHN LINDBERG TRIO

 傑作という言葉すら薄ら寒いほどのすばらしいアルバムだと思う。愛聴盤である。フロントがジョージ・ルイスなのでああいったタイプの即興かと思う向きもあろうが、さにあらず、きちんとしたチューンがあり、グルーヴがあり、そこで綾なされる3人による音のタペストリーは瞠目のひとこと。ジョン・リンドバーグのリーダーシップが見事に発揮されていて、全体をはっきりした統一感で貫いているが、なんといってもフロントであるジョージ・ルイスの最高の演奏が、このアルバムのクオリティを大きく引きあげている。いやー、ジョージ・ルイス、すげーっす! あれだけぐちゃぐちゃのインプロヴィゼイションを展開したり、エレクトロニクスを駆使したノイズっぽいこともやるひとが、本作ではパシーッとトロンボーンプレイヤーに徹しているが、その徹し方が半端ではない。JJジョンソンよりうまいんちゃうか……と言いたくなるほど、めちゃめちゃうまい。音の出し方、その音色、音程、フレージング、アーティキュレイション、リズム、そして歌心……もう完璧。しかも、リンドバーグの作り出すグルーヴに乗って、びっくりするぐらいアイデア満載のフレーズを吹きまくる。音色もフレーズも千変万化のイマジネーションにあふれ、聴いていてうっとりしてしまう。まあ、ジョージ・ルイスのさまざまな活動を聴いていると、本作のような演奏もたくさんあるので、これぐらい吹けるのはあたりまえといえばあたりまえだが(なにしろカウント・ベイシーにも所属していたことがあるのだからねー)、たとえばアンソニー・ブラクストンとやってるやつにしても、もうちょっとフリーっぽくて、ここまでがっつり「ジャズ」というのは珍しいじゃないか? リンドバーグの作曲もすばらしいし、バリー・アルトシュルのパーカッションもよく、いやはやこのトリオはすごすぎる。じつは、昔、リンドバーグのライヴを主催したことがあり、そのときのメンバーはたしかドラムが豊住さんで、トロンボーンが大原さん、サックスが井上敬三さんだったように思う(ボントロが大原さんだったことはまちがいない)。で、そのときの演奏が本作のような展開になったかというと、やはりまったくそういうことはなくて、かなり過激な即興につぐ即興……みたいな一種の衝突であり、それはそれでおもしろかった。まあ、ジョージ・ルイスと大原さんはまったくちがうということですね(あたりまえ)。