joe lovano

「JOE LOVANO QUARTETS LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD」(BLUE NOTE CDP7243 8 29125 21)
JOE LOVANO QUARTETS

ヴィレッジ・ヴァンガードでのふたつのライヴをまとめた二枚組。どちらもカルテットだが編成が全然ちがう。1枚目は、トム・ハレルが入った2管で、ピアノレスカルテット(ベースはアンソニー・コックス、ドラムはビリー・ハート)、2枚目は、ワン・ホーン・カルテットでピアノはマルグリュー・ミラー、ベースはクリスチャン・マクブライド、ドラムはルイス・ナッシュ。どちらもめちゃめちゃ強力なメンバーだが、演奏から受ける印象はまったくちがう。180度ちがう、といってもいい。二枚目のワンホーンのほうははにかくめちゃめちゃかっこいい。現代テナーのひとつの理想的な姿といえるかもしれない。それぐらいすごい演奏で、ノリのいいモダンなフレーズと歌心あるフレーズを織りまぜて、一瞬のためらいもなく吹きまくり、ここぞというところで濁ったフラジオで絶叫し、あっと言う間に聴衆は興奮のるつぼに叩きこまれる。曲も、コルトレーンの「ロニーズ・ラメント」、モンクの「リフレクションズ」、マイルスの「リトル・ウィリー・リープス」、ミンガスの「デューク・エリントン・サウンド・オブ・ジョイ」など渋い、通好みのところをついてきて、ビバップの曲ではバップフレーズを吹きまくり、爽快な気分にさせてくれる。バップからモード、フリーまでどんなことでもできる、ということを証明する演奏である。サイドマンもすごくて、マルグリュー・ミラーのソロはまるで自分のリーダーアルバムのように気合いが入っているし、ルイス・ナッシュは見事にフロントをあおりまくる。ものすごくレベルの高いライヴであり、とても気に入った。一方、一枚めのピアノレスカルテットのほうだが、これは二枚目に比べると、あまり私の好みではない。だいたいジョー・ロバーノというひとは、いろんな側面を持ったテナーマンで、ときどき耽美的というかビル・エヴァンスをサックスに置き換えたようなディープで蠱惑的な演奏をするときがある。ビル・フリーゼルとかポール・モチアンとやってる演奏など、まるで別人のようだ。その凄さはわからんでもないのだが、まあ、音楽の嗜好が幼稚で、単純にガーッと吹くようなタイプの演奏を好む私としては、こういう、よく言えば叙情的、悪くいえば茫洋としたプレイのときのロバーノはいまひとつ興味がわかない。で、この一枚目のロバーノはそこまで耽美的ではないが、なんとなく茫洋としていて、音色もスタン・ゲッツのようで、どっちかというとトム・ハレルのほうがばりばり吹いている感じである。曲もいいし、意欲的だし、ライヴならではの昂揚もあるのだが、やっぱりワンホーンカルテットのほうがずっとずっと私の好みです。でも、逆の好みのひともいるだろうから、そういう意味では、両極端に二面性が聴ける、ということでお買い得な二枚組ともいえる。