alex lozupone

「SPEECHLESS」(DOG AND PANDA 24)
EIGHTY−POUND PUG(ALEX LOZUPONE PROJECT

 ギターのアレックス・ロズポーン(と読むのか?)というひとが仕切っている、おそらくは即興系の若手を集めたプロジェクトである「エイティー・パウンド・パグ」のライヴを収めた一種のオムニバスだと思う。延べ15人のプレイヤーが参加していて、曲数は全部で14曲。フェイドアウトとか、ブツッと切れる曲もある。アレックス・ロズボーンは全曲に参加しているが、ほかでは、ドラムのPAUL FEITZINGERというひとが12曲に参加している。それ以外は、だいたい2曲ずつぐらい。サックス〜クラリネット系が多く、15人中8人が木管楽器奏者である(逆に金管はゼロ)。しかし、知っているプレイヤーは正直、吉田野乃子だけだが(2曲に参加)、ほかのひとも皆めちゃ上手くて、ニューヨークの若手の即興シーンの層の厚さを見せつけられる。とにかく、管体がしっかり鳴りまくっているひとが多いので聞いていて気持ちがいいし、ほとんどがピッチも良くて基礎をちゃんとおさえているうえ、フラジオ、フリークトーン、マルチフォニックス、サーキュラー、グロウル……などの奏法にも長けていて、安心感がある(そんなこと即興には関係ない、という考えもあるかもしれないが、聞き手に与える心地よさのひとつとしては重要だと思う)。でも、それは破綻がないということにもなるので、こうやってずらずらーっと並べられると、突出した個性もなかなか感じ取れないが、それはおそらく、もう少し長尺の参加曲があればそこで発揮されるもので、このアルバムはある種の名刺代わり的なものなのだろう。参加者のなかにはアユミ・イシトとかデヴィッド・タムラといった名前もあり、日系のかただろうと思うが、全然知らない。だいたいが即興セッションみたいな感じで、ワンコードでアレックスのギターがリフを弾いて、ドラムがシンプルなパターンを叩いて、そこに管楽器が乗っていき、あるいは複数の楽器が絡み……というものが多い。え? どれも一緒やんて? まあ、どの演奏もひとつのパターンみたいな感じにはなっているかもしれない。でも、そういう(同じような)状況でどれだけ自分を発揮できるかという修練の場ともいえる。いくつかの即興的なリフを吹いて、それをハモったり、みんなが合わせてきたり……というやり方も何曲か見られる。みんなテクニック的には上手いし、曲が短いこともあって飽きることはない。ジャズ的なルーツを感じさせるひともけっこういる。私は何度も繰り返し聴いて、そのたびにいろいろ発見もあった。今のニューヨークの即興シーン(の一部?)俯瞰できるアルバムだと思う。あと、裏ジャケに書かれている楽器別の参加リストだが、ときどき「あれ? これってテナーか?」という場合もあり(曲中で持ち替えてるときもあるみたい)、信用できない。このレーベル(ドック・アンド・パンダ)はほかにも面白そうなアルバムを一杯出しているみたいですよ。