werner ludi

「気」(INTACT RECORDS INTAKT CD051)
WERNER LUDI

 ヴェルーナ・ルディはすごい。なんといっても、音がすごい。バリトンがぶっこわれそうなほどのすごい音圧である。身をよじって吹いている感じが伝わってくる。共演者のどんな音も聞き逃さず、全身全霊で反応しているのがわかる。一瞬の休みもなく、ひたすら大音量でブロウする。これは、サックスを吹いたことのあるひとならわかると思うが、たいへんなことである。管楽器というものは、ある程度吹いたら休みをとらないと、唇がばてるし、肉体的にもつらいのである。しかし、ルディは休まない。手抜きなしの入魂のブロウ。クライマックスのうえにクライマックスを重ねるように、どんどん上へ上へとつみあげるような吹き方。これはいかにもしんどそうだ。こういう吹き方が、命を縮める結果につながったのでは……と思わざるを得ない。タイプとしては、ひじょーーーーに古いフリージャズ、つまり、肉体派というか、パワーミュージックの人だと思うが(その代表は、彼の盟友であるブロッツマン)、大音量で、個性的な音色で、ひたむきに楽器を鳴らしまくるその方法論(?)は、時代をこえて説得力があるものである。このアルバムには、羽野昌二のドラムを相棒に、ベースをちがえた二曲が収録されているが、私の好みとしてはやっぱりウィリアム・パーカーのウッドベースとやってるほうかな。もういっぽうの山内テツのエレベが加わっているものは、エレベとサックスのねらい所の乖離がおもしろいし、そういうところを狙っているのだろうと思うが、しっくりくるのは前者である。ルディは、いずれの演奏でも立派。羽野昌二はいつものように一本調子の押せ押せの演奏で(それが、めちゃめちゃはまりまくる場合もあるのだが)、いまいち快感につながらないが、ルディにとってはイマジネイションの源泉となっているのかもしれない。そのあたりは、ちょっとわかりません。

「GRAND BAZAR」(CREATIVE WORKS RECORDS CW1012−1)
WERNER LUDI BURHAN OCAL

すごいなあ、とか、ええなあ、というレベルではなく、歴史に残ると思えるほどの傑作……と私は思うけどね。正直、ルディがバリトンを吹かず、アルトのみに徹しているという時点で、うーん……と思ったが、聴いてみると、いやはや、アルトだけで十分です、いや、そのほうがよかった、と思えるほどのすばらしい演奏だった。かっこよすぎる。アルトの音が太く、朗々と鳴っていて、目がうるうるする。ドラム〜パーカッションのBURHAN OCAL(表記が全然ちがうんです。すいません)のリズムがあまりにパワフルかつ歌心がありすぎて、いやー、これに乗っかったらどんなサックスでも名演になるんじゃないの、とすら思わせてくれるようなすごいドラミングなのだが(民族音楽というか、ガムランとかそういったものを感じる瞬間もある)、そこに乗っかるルディのアルトがまたすばらしいので、上記に書いたように、私としては歴史的な傑作といえるようなアルバムになったと思う。これが、同じルディと同じくドラマーのデュオとして、羽野昌二との作品があるが(そちらはバリトンがメイン)、どこがどうちがうのかはわからないけれども、まったくちがった内容である。やはりドラマーのタイプがぜんぜんちがうんだろうなあ。