paul lytton

「CINC」(OKKADISK ODL10009)
PAUL LYTTON,KEN VANDERMARK,PHILLIPP WACHSMANN

 なんとなく聴く気がせず、苦労して手に入れたわりに、しばらくほっておいたのだが、聴いてみると……わちゃーっ、久々に大傑作の予感! 一曲めから私のつぼにはまりまくり。ポール・リットンとヴァンダーマークは「イングリッシュ・スーツ」をはじめ、何枚かで共演しているが、このアルバムがいちばんいい。リットンは、ハミッド・ドレイクのようなパワーとバネも、ニルセンラヴのようなバカテクもないが、柔軟でツボを心得た反応ぶりでトリオをリードする。ヴァンダーマークも、ヴァンダーマーク5やテリトリーバンドのような作曲でがんじがらめになったものより、こういうシチュエーションのほうが気楽に吹けるのか、まさにやりたい放題で、もうひとりのヴァイオリン〜エレクトロニクスのフィリップ・ワッチマン(と読むのかなあ?)とともに極上の即興を展開してくれる。聴いていると、まさにひとときの夢というか、現実を離れてちがう世界に遊ばせてくれるような、こういうインプロヴィゼイションが好きなんです。フランスとスロヴェニアのライヴを収録したもので、全曲完全即興。しかも、フランスのほうは「エンジニア・アンノウン」となっていて、かなりええかげんな音源のようだ。そのうえ1000枚限定で、ジャケットもめっちゃしょぼい。オッカはときどきこういうことをやるからなあ。しかし、演奏は最高です。だまされたと思ってみんな聴いてほしい。え? もう売ってないってっ? へっへっへっ。完全に3者対等だと思うが、いちばん先に名前の書いてあるポールン・リットンの項目に入れた(プロデューサー名すら書いてないのだ)。