「ECO D’ALBERI」(PORTER RECORDS PRCD−4054)
ECO D’ALBERI
札幌のJOEさんが、まえにすごくいいと言っていたアルバムで、イタリアのグループらしい。最近このテナーのひとのリーダー作が出て、それをまたJOEさんがほめていたので、食指が動いたのだか、いやー、こんなにいいと思わなかったなあ。テナー、ピアノ、ベース、ドラムというフリージャズの王道的編成で、やっていることも昔ながらのと頭に付け足したくなるような、きわめて古いタイプのオーソドックスなフリージャズに思えるかもしれないが、その演奏技術などはめちゃくちゃハイレベルで、彼らが(おそらく)どんなジャンルの音楽でも楽勝でこなせる技術を持ちながら、こういうサウンドを表現の形態として選んでいることがわかる。とくにテナーのひとは、音が良い。硬質でエッジの立った現代風な音だが、どこかテキサステナーの匂いもするような「めっちゃええ音」で、プレイも荒々しさとフリーキーさ、狙いとでたらめが同居するようなプレイで、ハッとする瞬間の連続。持ち替えがソプラノではなくソプラニーノというのもなんとなくわかる(どうせ高音楽器を持ち替えにするなら、より高い音のほうがテナーと差別化できる、というようなことじゃないの?と勝手に解釈しました)。ピアノは、セシル・テイラーや山下洋輔、最近ではマシュー・シップのように、つねに弾きまくるタイプではなく、コードやリズムでコミュニケイトするひとのようだ。一言でいうと、「どしゃめしゃ」な感じのフリージャズなのだが、パワーとパッションに満ちているのは当然で、しかも(さっきも書いたけど)演奏技術がみんな高いので、たがいにつぶし合うことがなく(フリージャズの場合、これ多い)、パワーがひとところに寄ってしまうこともなく、「どしゃめしゃ」のようでじつは全体としてバランスがとれていて、そのバランスのうえに、全員一丸の突撃があるので、聴いていて気持ちがいい。また、ほぼ全部即興のようだが、ダレる瞬間がほとんどない(少しはある)というのも、じつは驚異的なことで、こういうタイプの演奏の場合、ダレもまた味のうち、ぐらいの気持ちで聴くのがふつうだと思うが(俺だけ?)、この4人は聴き手をしっかりつかんで飽きさせない。あたりまえやんと思うかもしれないがなかなかできませんよ。テナーのひとの経歴をネットで調べたのだが、共演歴も、有名どころはニルセンラヴとかポール・ロヴンスぐらいしかなく、きっとこれからガンガン有名になっていくひとなのだろう。無伴奏ソロアルバムも出ているらしいが、たぶん入手困難だろうな。聴きたい。なお、4人対等のグループだと思うが、便宜上、最初に名前の出ているテナーのエドアルド・マラッファ(と読むのか?)の項に入れた。