「SLEEPY AT THE VIDEO」(THINK!RECORDS THCD−020)
松本英彦
前半が「スリーピーズ・ムード」、後半がジャムセッションという二部構成の、「ビデオ・ホール」でのライヴ盤。「スリーピーズ・ムード」というのは、要するにムードテナー。一曲目「ハーレム・ノクターン」からして、音色、音量コントロール、フレーズの表情、すべてがすばらしい。有名なスタンダードばかり並べ立て、コーラスグループまで参加させての官能的ブロウだが、歌心と情感にあふれているので、ほれぼれと聴き入ってしまう。この時代にこれだけ吹けたというのは驚きであって、世界レベルに達していたと思われる。後半のジャムセッションは、一転してアップテンポの曲が並び、それなりに聴かせるのだが、もうちょっとテンポを下げれば、非常に音楽的な演奏になるのに、なぜか「めちゃめちゃアップテンポ」にこだわり、エキサイティングといえばエキサイティングだが、しんどい演奏ばかり。松本英彦自身はまあまあなのだが、共演のたとえば渡辺貞夫などはよれよれで、まるでフレーズが出ない(このひとは、いつもそう。ライブレコーディングのときは、たいがい調子が悪い。でも、それが非常に「生」な感じで、ある意味、おもしろいけれど)。前半を聞くべきアルバムか。