「MUSIC FROM THE SOURCE」(ENJA & YELLOWBIRDRECORDS CDSOL−46449)
CECIL MCBEE
セシル・マクビーをリーダーとした6人のつわものたちによる「スウィート・ベイジル」でのライヴ。なんとも豪華な顔合わせである。1曲目はロイ・ヘインズに捧げたマクビーの曲で、チコ・フリーマンのフルートを中心にしたアルコベース、ピアノ、パーカッションなどによるフリー・リズムなイントロダクションではじまり、幽玄な雰囲気を持続する。それが一旦引き潮のように引いたあと、今度はマクビーの力強いピチカートを中心とした、同じくフリーリズムの演奏になり、一転して「ワン・ツー・スリー・フォー」という露骨なカウントからイントロ、そして、モードジャズ的なテーマがはじまる。ドン・モイエのパーカッションが躍動するスパニッシュな、というかマカロニ・ウエスタンのような曲調で、先発はチコ・フリーマンの若々しいテナー。このころのチコ・フリーマンはどれを聴いてもかっこいい。ここでも、粗削りだが、単調に陥るとかそういうことを恐れない大胆さで「これが俺だ!」というような激しいソロをぶちかましている。後半はかなりフリーキーになったり、自由奔放な吹きまくりなのだが、「やってしまったもん勝ち」的な演奏はかなり説得力がある。ドン・モイエのものすごいスピード感のあるパーカッションソロが延々続き、凄いフレーズや技続出なのだが、グルーヴ感はひたすらキープされていて、いかにも「人間が叩いてます」という感じのソロなのである。参った。そして、イントロからテーマ。最後は、ピアノが荘厳なコードを弾くエンディング(かなり長い)。2曲目もマクビーの曲で、ピアノのキラキラしたオープニングから重々しいマクビーのベースに乗って、ほとんどルバートな感じのかなり自由なリズムでジョー・ガードナーが輝かしい音色のメロディを吹く。そこからインテンポのバラードのテーマになるが(めちゃくちゃいい曲)、ガードナーはソロを取らず、そのあとすぐにまたマクビーのベースソロがはじまるが、この部分はルバートである。当時まだ42歳のマクビーの力のこもった美しいソロとそれにからむピアノを堪能したあと、ふたたびインテンポになってテーマに戻る。3曲目はどこかで聞いた曲だと思ったら、ハル・ギャルパーの「ナウ・ヒア・ジス」に入ってる曲で、えっ、マクビーの作曲だっけ、と確認したら、ギャルパーの曲だった。クラーベが聞こえるようなサルサっぽいリズムにベースのパターン、管楽器がロングトーンで乗る、いかにも70年代風のかっこいい曲。先発はチコ・フリーマンで、ここでも1曲目に書いたことと同じことを書こう。つまり、粗削りだが自分を露わにすることを恐れないのびのびした演奏で、たいへん魅力的である。途中、けっこうがちゃがちゃしたり、一本調子になったりするが、そういうことを恐れずガンガン行くところがよい。別のキーに行ったりしてなかなかいい感じ。最後はきっちり落とすところに落とすきれいなソロでもある。続くジョー・ガードナーは端正なハードバッパー的なソロで、テナーと対照的である。ときに小技をきかせて表現力の幅を示す。客(?)がひとり、途中から大声で「イエーッ、イエーッ」とずっと叫んでいて状況がよくわからんが変な盛り上がり方である。デニス・ムアマンのピアノソロはバラエティ豊かなボキャブラリーを全開にして、さまざまな技を繰り出してきて飽きさせない。そして、マクビーのベースソロはさすがに圧巻で、ベースが歌いまくり、攻めまくり、グルーヴしまくる。長尺3曲で、ライヴということもあって、けっこうざっくりした、ソロイストそれぞれに調子の波がある演奏だが、終始熱い。