jimmy mccracklin

「HEAR MY STORY」(JASMINE−RECORDS JASMINE 3080)
JIMMY MCCRACKLIN & HIS BLUES BLASTERS:SELECTED RECORDINGS 1956−1962

 ジミー・マクラクリンはけっこう廃盤率が高いのだが、これはなかなかいい感じの2イン1。インペリアルの「I JUST GOTTA KNOW」とチェスの「SINGS」を中心に当時のいろいろなレーベルに残された音源を大量にぶちこんである。タイトルから考えても一種のベスト盤と扱うことも可能かと思う。ロウエル・フルソンがらみで語られることも多いが、このひとはもっと音楽性が幅広く、ここで聴かれるようにめちゃくちゃファンキーでR&B的で、非常に早い段階からこういうノリノリのブルースに手を染めている。たいがいはラファイエット・トーマスの絶妙のギターが駆けまわり、グロウルしまくりのテナー(ウィリー・コバルトというひとか? ウィリー・カイザートというひともすごいのだが、同一人物か? というか後者はギタリストとして知られているあのひとか?よくわからん)が緊張感を高め、自身のロールするピアノが縦横に走り、そして、これも自身の甘くもあり辛くもあり大迫力の最高のボーカルがフィーチュアされる……という展開なのだが、あまりにすばらしすぎてコトバを失う。ドゥーワップ的コーラスやホーンセクション、オルガンなどを上手く使った曲も多く、キャッチーでバラエティにとんで飽きさせない。個人的には、同時期のバディ・ガイのチェス録音にも感じることだが、ズンドコズンドコというビートやホーンアレンジのイナタさ(とくにもっちゃりしたバリサク)がなんともいえない良さがあって病みつきになる。これらがR&Bになりロックになって洗練されていくのかもしれないが、この時期のブルースにはほんとにこの時期ならではの良さがありますよね。稲妻のようなトーマスのギターもききものである。なにしろ2枚組で58曲も入ってるので、一度に聞きとおすのは無理だが、何回かにわけて聴けば、毎日浸れます。ソングライターとしてもすごいのでそういう楽しみもある(「ザ・ウォーク」も入ってる。「シェイム・シェイム・シェイム」というのはスマイリー・ルイスとはべつもの)。とにかくどの曲もエンターテインメントとしてのひとひねりがしてあって顔がほころぶし、足がストンプする。多くのレーベルでシングルを出し続けてきたしたたかさも感じられる。全体にごりごりの(けっこう上手い)テナーがフィーチュアされているのを聴くのも私としては楽しい。のびやかなジャンプブルースに感じられる。
 2枚目もいろいろ入っているが、クオリティはまったく同等なので、ジミー・マクラクリンの職人技を感じざるをえない。天才でもなく、奇人変人でもなく、きっちりしたレベルの演奏がそもそもできてしまう。それをどこまで高みに持っていくか、ということだが、そういうことがきっちりできて、しかもそのうえに積み重ねていけるひと、という印象です。どうしても「天才」「奇人変人」「風狂」みたいなひとをもてはやすことになりがちだが、このあたりの音源を聴くと、曲全体のバランスのよさも含めて(ここぞ、というとき以外、自分が出しゃばることをしない)スタジオミュージシャンの先駆という感じもある。ロールするピアノのファンも張り詰めたボーカルのファンもからみまくるギターのファンもブラッシュで叩き出す派手なビートもお決まりながら高揚するテナー(とくにテナーはがんばっている)も、すべてがしっかりと手に手を取ってこちらに向かって押し寄せてくる。とにかく全員腕があって、ボーカルとピアノが別々に録音することなどできなかった時代に(私はやはり今でも「同時録音」が基本だと思っています。音楽の種類にもよるとは思うけど……)こういう音楽が録音されて、今でもリアルで美しい音で再現されるのはすばらしいことではないですか。
 テナーがティナ・ブルックスの兄としてジャズ的には知られているバッバ・ブルックスだったり、ワイルド・ウィリー・ムーアというのはたぶんワイルド・ビル・ムーアだろうと思ったり、アルトになんとアール・ウォーレンがいたり、ピアノがメンフィス・スリムだったり、ドラムがパナマ・フランシスだったり、オルガンがジャック・マクダフだったり……とびっくりすることも多いのだが、マクラクリンはそういう有名無名の凄腕たちにビビることもなく、ぐいぐい引っ張っていって自分の音楽にしてしまっているのはすごい。とにかくこういう音楽はテナーが活躍するのですばらしいです。ブルースファンには間奏として聞き流す感じなのかもしれないが私にとってはボーカル、ギター、ピアノ……などとならぶ重要なソロパートです。かっこいいよねー。でも、アルトもすごくて、たとえば27曲目のアルトソロはジュニア・パーカーというひとらしいが(あのボーカルのリトル・ジュニア・パーカーとは別人でしょう)、まさにメイシオかハンク・クロフォードかというストレ―トな音色でぶちかましてくれる。28曲目も同様で、このひとの実力のほどがよくわかる。このあたりのことはよくわからんなあ。でも、とにかくこの二枚組に詰まっている音楽は本当にすばらしいので、私もときどき聴いてます。最高!