jack mcduff

「DOUBLE BARRELLED SOUL」(ATLANTIC AMCY−12669)
BROTHER JACK MCDUFF & DAVID NEWMAN

 ファットヘッド・ニューマンというひとは、今はもうジャズしかやらなくなってしまったが、もともとはレイ・チャールズバンドの音楽的仕切りをしていたようなひとで、アトランティックのころのリーダー作はどれも、ファンキージャズとR&Bをフュージョンさせたような、かなりごっつい感じの演奏が多く、本作もそういうタイプのアルバム。そういうアルバムを聴いていつも思うのは、ラスティ・ブライアントにしてもニューマンにしてもヒューストン・パーソンにしてもグローバー・ワシントンにしても(もちろんタレンタインにしても)、いわゆるホンカーとかブロウテナーではないのだということでありまして、黒いフィーリングをたっぷり持っているが、ダーティートーンやホンク(同じ音をリズミックに吹く)やフリークトーンなどでシンプルに盛り上げるといったことを期待してはならない。学生のころ〜会社員のころの私はそういうことがわからず、腰の入らん、へろへろしたヤワな吹き方するやつらやで、男やったら、もっとドスのきいたブロウしてみい、と一刀両断していた。本作も、最初に聴いたときは、マクダフがオルガンで煽りまくって、ファットヘッド・ニューマンが血管ぶちぎれのブロウを展開しているにちがいない、うひょー、とか言って聴いてみたら、なんじゃこれは、せっかくマクダフがぶりぶりいわしてるのに、おまえはポップチューンとかをメロウに吹きやがって、結局金か!……などと理不尽に怒ったものだが、こういう聴き方がまちがっていることはさすがに今はわかる。あれほど憤懣を覚えたアルトによる「サニー」などのポップチューンも、その後のハンク・クロフォードやメイシオ、グローバー・ワシントンなどにつながる、ファンキーで黒い歌心あふれる演奏なのだ、ということもわかる。しかし、このアルバムは本当に昔探したし、そのあいだに期待が勝手に膨らんだこともあって、はじめて聞いたときはけっこうがっかりした記憶がある。ようするにわしゃ、テナーがぶっとい音でぎゃーぎゃーいいたおすのが好きなのであって、こういうクールにコントロールされたソウルテナー的なものは物足らないのです(だからキング・カーティスよりもジュニア・ウォーカーなのだ)。でも、もちろん今はわかりますよ(ほんとかなあ)。少なくとも、最近の「ジャズミュージシャン」のファットヘッドよりも、このころがいちばん黒々と輝いていたことはわかるし、大好きであります。一曲目の、ジャズロックというか、ややファンクなリフ曲で、マクダフがオルガンをぶいぶいいわせたあとに出てきて(マクダフのソロは、ソロでもシンプルなリフを中心に構成されており、それをしつこく弾けば弾くほど客が湧くのを熟知している感じがする)、派手なブロウこそないが渋く「アルトを唸らせる」感じとか、「サニー」でアルトをひたすら歌わせる感じとか(ソニー・クリスを連想)、「エスペラント」や「ダフィン・ラウンド」(8ビートのまさにジャズロック)でのフルートによる耳当たりのよいファンキーな感じとか、「モア・ヘッド」の軽くスウィングするテナーの楽しい感じとか、スローブルースである「アンタイトルド・ブルース」の「もうちょっとでハンク・クロフォード」なアルトの感じとか……当時はウケまくったのだろうと思う。今の耳で聞くと、ややファンキーな「ジャズ」だが、当時はこんなのでもソウルというかR&B寄りの演奏だったのだろう。ファットヘッド・ニューマン……大好きなテナー吹きなのだが、なぜか文句ばかりになってしまった(私にとってはテナー吹きなのだが、本作では1曲しかテナーを吹いてないことないっすか?)。でも、本作もめちゃめちゃいいのはまちがいない。ようするに、ソロを聴くんじゃなくて、マクダフ一派のリズムをうはうはいいながら味わうアルバムってことですね。このアルバムは、ソロがどうのこうのとかいうより、にこにこ顔で指でリズムとりながら酒飲みながら、かっこええやん、渋いやん、と言いながらみんなで聴くようにできている。それにしてもマクダフというひとは、あざとい、コテコテのフレーズばかり弾くひとで、もう笑ってしまう。しかし、リズムが抜群にいいので、なにを弾いてもかっこよく聞こえるのだ。さて、(興味がそこにしかないので)ファットヘッドのことばかり書いたが、先に名前の出ているマクダフの項に入れた。マクダフにとっても、ファットヘッドは、ジミー・フォレストやレッド・ホロウェイ以来のテナーのぴったりの相棒だと思う。ほんと、ダブルバレルド・ソウルって感じ。

「BROTHER JACK MEETS THE BOSS」(PRESTIGE7228)
JACK MCDUFF AND GENE AMMONS

 ブラザー・ジャック・マクダフとジーン・アモンズががっつり組んだアルバム。62年の録音なので、二度目の投獄直前の吹き込みということだと思うがアモンズは快調。コテコテのオルガンジャズ+テナーで、私のもっとも愛好するところであります。LP尺なのでたっぷりと両人の至芸を楽しめる。その昔、はじめて聴いたときは、ブラザー・ジャックとボスとの邂逅にしてはややおとなしいのではないか、と思ったが、こうして聴き直してみると、そんなことはまったくなくて、ノリといいフレーズといい、コテコテ魂をぶつけあっていて凄い。おそらく当時レギュラーだったハロルド・ヴィックも入っていて、さぞかし凄まじいテナーバトルが展開しているだろう、と思っていたのが、おそらく「おとなしめ」に感じた要因だろう。ここは大スターアモンズを立てて、あくまでアモンズ〜マクダフというミーティングを聴かせるアルバムなのだ。しかし、ヴィックもテーマ部分のハモリを請け負っており、それがなかったらかなり印象が違っていただろうし、A−2ではアモンズが休みなのでワンホーンでフィーチュアされて活躍する。A−1は「フライング・ホーム」マナーの曲で、アモンズもマクダフも絶好調の演奏。A−3は「メロウ・グレイヴィ」のタイトルどおりのスローブルースで、至芸に酔う、というか聞き惚れる。B−1は「クリストファー・コロンブス」というタイトル(なんで?)の循環の曲で、アモンズもモダンなフレーズを吹きまくり、マクダフも思いっきりこれ見よがしにピラピラピラピラ……とトリルをぶちかましていてかっこいい! この「ウケるまでやる」「ウケたら何度でもやる」「適度にとめる、ということをせずしつこくやる」という感覚はじつに楽しい。B−2はミディアムスローテンポのブルースでマクダフの速弾きが炸裂しまくっていて心地よい。やりすぎだ! という意見もあるだろうが、これぐらいやってくれると腹いっぱいになる。ほとんどホンカーのようなフレーズもあって、すごい。つづくギターソロは一転して落ち着いた渋めのもので、その対比がなんともいえない。最後にアモンズが出てくるのだが、美味しいフレーズをずらりと並べたてたような感じで贅沢感がある。ラストのB−3はジョー・デュークスのドラムも活躍するアップテンポの曲。タイトルが「ミスター・クリーン」と意味深か(?)。いやー、アモンズのこのポキポキした四角いノリはたまらんなー。そのあとヴィックも登場。やはりアモンズよりはモダンな感じだが、これもいい感じのはしゃぎ方。ギターソロのあとマクダフのファンキーではあるがかなりきっちりしたソロ。マクダフはけっこう構成力があり、ここで盛り上げて……みたいなことを計算していると思う。終わったあとのドヤ顔が目に浮かぶ。リフが入ってドラムソロ。残念ながらこの曲ではアモンズとヴィックのバトルはないのだが、非常にエキサイティングな演奏で満足。

「TOUGH ’DUFF」(PRESTIGE P−7185/OJC−324)
JACK MCDUFF WITH JIMMY FORREST

 プレスティッジのスター街道をまっしぐらに登っていた時期のマクダフの濃い〜アルバム。メンバーはジミー・フォレストにヴァイヴのレム・ウィンチェスターが加わるという豪華絢爛さ。珍しくギターは入っていない。A−1はアーネット・コブのおなじみ「スムース・セイリン」だが、テーマ自体をちょっと変えてあり、べつの曲といっても通りそうである。とにかくフォレストの単身のブロウが凄まじく、音色といい音圧といいフレージングといい文句のつけようがない。マクダフのソロも熱量が半端なく、そのふたりに挟まれたレム・ウィンチェスターのビブラホンが清涼感があるように聞こえるほどである。2曲目はミディアムテンポで軽快にスウィングする曲だが、ここでもフォレストが凄すぎる。完璧なソロでひたすら聴き惚れてしまう。「惚れてまうやろ!」と叫びたくなる。ヴァイヴのソロのあとのマクダフも、軽く、洒落た感じで、こういう演奏も上手いひとなのである。3曲目はアーネスト・ホーキンスの古い曲だそうだが、ヴァイヴをフィーチュアしたテーマはラテンっぽいリズムで、メジャーとマイナーを行き来する感じがなかなか面白い。で、テーマが終わるといきなり4ビートになり、ガクッとなる。オルガンソロのあと、レム・ウィンチェスターの、間をいかした、というか、十分にタメたソロがとてもいい雰囲気。最後に出てくるフォレストのソロはやはり見事すぎて、なんでもできるひとやなー、と思う。B−1は「イエー、ベイビー」というマクダフの曲で、曲というより、ほんとに単純きわまりないリフを3回繰り返すだけのミディアムテンポのブルースなのだが、そういうのがなぜかめちゃくちゃかっこよく聞こえる不思議。重厚だが、ノリノリでもある。オルガンソロの途中で倍テンになって、そこもかっこいい。ヴァイヴの見事なタメのソロもすばらしいし、途中から16分音符中心になるが、一音一音がしっかりコントロールされまくってて本当にいいソロ。最後に出てくるフォレストは、もう言うことありません、というぐらいなにからなにまで美味しい。フレーズのひとつひとつに感心する。いやー、すごいわ。そのあとマクダフ→ウィンチェスター→フォレスト→エリオットの順で4バースがあってここも楽しい。B−2は「枯葉」で、全員ぐっと抑制をきかせた感じの演奏。ラストテーマでフォレストがグロウルしながら吹くところがめちゃかっこいい。なにをやらせてもさまになるひとだ。ラストのB−3はミディアムスローのブルースで、これもまた「曲」とはいえないようなリフをむりやり「曲」だと言い張ってる感じで笑える。コテコテであることは約束されたようなテンポで、マクダフのソロはテーマと同じく、できるだけシンプルな音使いを積み上げていくような演奏。つづくフォレストのソロも似た傾向のもので、フレーズを聞かせるというより音色やノリでブルースフィーリングを強く押し出すような演奏。めちゃくちゃかっこいい。レム・ウィンチェスターのソロもたっぷりしたタメをこちらにぐっと押し込んでくるようなドスのきいた演奏。エンディングもいい。この3人のフロントはマジ完璧。マクダフファンだけでなく、フォレストファン、ウィンチェスターファンにもぜひ聴いてほしいです。傑作。

「THE HONEYDRIPPER」(PRESTIGE P−7199/OJC−222)
JACK MCDUFF WITH JIMMY FORREST

 プレスティッジのスターだったころのマクダフの代表作といえる一枚だと思う。このころマクダフは30代半ば。マクダフは、多くのファンキー系テナー奏者(ギター奏者もだが)を育て、マクダフバンドはそういったテナー吹きにとっての登竜門的な場だったと思うが、フォレストは別格だっとみえ、本作や「タフ・ダフ」では「ウィズ・ジミー・フォレスト」と記載している。A−1はバリバリスウィングするテンポの軽快な曲だが、軽快といってもこのひとたちの場合は「ドスのきいた軽快さ」である。マクダフからフォレストへとリレーされるソロを聴くだけで、本作の成功は保証されたようなもんだ。それぞれのソロは短いがぎゅっと凝縮している。オルガンとテナーの4バースを挟んで、ギターソロになるが、ギターはグラント・グリーン(!)。このソロのバッキングのオルガンがかっちょいい。ちなみにドラムはベン・ディクソンで、最強の4人である。2曲目は冒頭からゴージャスなビッグバンドのようなオルガンとテナーがぶちかますバラード(ジミー・ラッシングがベイシー楽団で歌った有名な「アイ・ウォント・ア・リトル・ガール」)。震えるようなオルガンのテーマがすばらしい。そのあと出てくるリフもベイシー楽団全員がそこにいるような迫力。フォレストのソロも、ベイシーでフィーチュアされるテナーの登場のようで凄まじい。グラント・グリーンのギターもほれぼれと聴くばかり。この1曲だけ抽出しても大傑作だと思う。3曲目はタイトルにもなっている「ハニードリッパー」で、ジャンプファンにはおなじみのジョー・リギンスの大ヒット曲。正直言って、なんでこの曲がそんなにヒットしたのかはよくわからない。マクダフはコテコテのペンタトニックだけのソロをするが、これがなんとも言えんかっこよさ。フォレストも完璧だが、それを煽るマクダフもすごい。B面に行きまして、1曲目はミディアムテンポのこってりしたブルース。曲というのもはばかられる音列だが、それがめちゃかっこいい。フォレストのソロの出だしの凄さよ! B−2はヘンリー・マンシーニによるテレビドラマの曲だそうである。マクダフはこういう曲も喜々として演奏しているが、フォレストはなんとなくやりにくそうに聴こえるのは私だけでしょうか。B−3はまたまたミディアムのブルースで、ちょっと変わったコード進行だが、快調に飛ばしていく。フォレストのソロはまさに「炸裂」という言葉がぴったり。グラント・グリーンも太い音でびしびし歌いあげていく。エンディングのしつこさもこのバンドならでは。あー、楽しい! オルガンジャズ+テナーを聴く喜びにあふれた傑作だと思います。

「THE BROTHER JACK MCDUFF QUARTET LIVE! AT THE JAZZ WORKSHOP」(PRESTIGE RECORDS 7286)
BROTHER JACK MCDUFF QUARTET

 ざわざわ……という客の話し声に続いて、MCの「プレスティッジレコードへのレコーディングナイトです」という声、そしてはじまる怒涛のパフォーマンス……というわけで、楽しい楽しいアルバムである(やや録音が悪い(ベースラインはちゃんと録れているのだが、肝心のマクダフのオルガンの録音レベルが低いような気もするが、臨場感はある。位相が揺れる箇所多し。プレスが悪いのかなあ……。なお、本作は「ロック・キャンディ」とかやってる「ライヴ!」とは別物だがカップリングしたアルバムもあったと思う)。レッド・ホロウェイ、ハロルド・ヴイックの2テナーにギターはジョージ・ベンソン! という豪華な面子でいやがうえにも期待が高まる。といっても、こういうソウルジャズセッションの場合、2テナーがグリフィン〜ロックジョウとかアモンズ〜スティットみたいなガチンコのバトルをするような展開にはならず、ふたりでこってりしたソロをつむいでいく……みたいな感じになるのだが、それもまたよし。1曲目のアップテンポのブルースでテーマのあと、2コーラスずつのソロのチェイスが延々展開する(2コーラスといっても2コーラス目9〜12小節目はつぎのソロイストのブレイクなので、実質的には1コーラスと8小節ということになる)。サックス奏者はふたりとも「テナーサックス」としかクレジットされていないが、ひとりはソプラノとフルートも吹いているし、もうひとりもフルートに持ち替えているような気がする。マクダフ→ベンソン→ヴィック(ソプラノ)→デュークス→マクダフ→ベンソン→ヴィック→デュークス→マクダフ→ベンソン→ホロウェイ→デュークス→マクダフ→ベンソン→ホロウェイ→デュークス→マクダフというソロ順ではないかと思うがよくわからん(ホロウェイがソプラノというのも変だが、フレーズからそう判断)。2曲目は軽いノリの(このバンドとしては)さわやかな曲。たぶんテナーソロはホロウェイで、フルートはヴィック。3曲目はミディアムスロー(?)のブルース。最初のフルートソロはヴィックのはずだが、聴いているとホロウェイっぽい気もする。4曲目はノリノリのブルース。ベンソンのソロが炸裂……と思いきやワンコーラスで終わる。なるほど、これはテーマ扱いの曲ですね。B面に移って1曲目は長尺のアップテンポの3拍子マイナー曲(マイナーブルースにサビ付き、みたいな構成)。先発ソロはマクダフで、さすがの貫禄。続いて(たぶん)ヴィックのテナーソロ。ベンソンのソロはすばらしいです。ワンコードでのデュークスのドラムソロのあとテーマ。2曲目はボサノバなのか? かなりドンチャカドンチャカしたリズムのうえでさわやか風なテーマが奏でられる。管楽器は(フルートのテーマ以外は)お休み。ラストはキャノンボールの(作曲はナット・アダレイですが)「ジャイヴ・サンバ」。リズム的にはサンバというよりジャズロック風。ワンホーンによるテーマのあとリフに乗せてドラムソロが延々続く。少々ダレるところだが、ライヴの現場的には盛り上がっただろう。そのあと(たぶん)マクダフが掛け声というかハミングっぽく歌いながら客をあおり、そのままテーマ。ごりごりのテナーバトルを期待した人(私ですが)にはやや物足りないエンディングだが、そのままグダグダと終了。この感じも嫌いではない。なお、サックスやフルートの聞き分けについてはまったく自信がありまへん。

「ROCK CANDY」(PRESTIGE RECORDS 24013)
JACK MCDUFF

プレスティッジのいろいろなアルバムからピックアップしたお得用LP2枚組。学生のころに買って、そのころはマクダフはこの1枚(2枚?)しか持ってなかったので、延々と聴き続けて飽きることはなかった。オリジナルアルバムのレビューがあるものはそれに譲るとして、それ以外の曲を簡単に紹介。A−1は「ハニードリッパー」のタイトルチューンなのでそちらを。A−2は「LIVE!」からのものなのでそちらを。A−3「ソウルフル・ドラム」はケニー・バレルやレオ・ライトが入った「スクリーミン」というアルバムからのもので、吹き伸ばしだけの恐ろしい曲。ドラムソロだけがフィーチュアされている。途中で倍テンになる。B−1「スクリーミン」も「スクリーミン」からの曲で、ノリのいいワンコードの曲。マクダフは明快なリフ主体のソロをぶちかまし、レオ・ライトはバップフレーズ中心にソウルフルに歌う(めちゃくちゃ上手い)。ここでもジョー・デュークスの長いドラムソロがフィーチュアされているが、このころのマクダフバンドはデュークスのドラムソロが売りのひとつだったのだろう。B−2「ブラザー・ジャック」は「ブラザー・ジャック」というタイトルのアルバムから。珍しくベースが入っていて、管楽器はいない。タイトルどおりマクダフがオルガンを弾き倒している。ビル・ジェニングスのギターもかっこいい。途中で4ビートになる。B−3「グリーズ・モンキー」は「ライヴ!」からなのでそちらを。C−1「ロック・キャンディ」は「ライヴ!」(上記「ライヴ!」とはちがうアルバム)からのもの。レッド・ホロウェイが野太い音でブロウしまくてっいてめちゃくちゃ興奮する。ギターはジョージ・ベンソンでさすがに文句のつけようがない最高のソロ。マクダフのソロも凄まじい。これでもか、とブルースをリスナーの上に幾重にも覆いかぶせてくる。このひとたち、こんなんやらせたら一晩中でもやってるんやろな……と思うような演奏。C−2は「ブラザー・ジャック・ミーツ・ザ・ボス」からのものなのでそちらを。C−3「オパス・デ・ファンク」もC−1と同じく「ライヴ!」からで、ホロウェイのテナーが絶好調である。D−1は「タフ・ダフ」からの曲なのでそちらを。D−2は「ブラザー・ジャック・ミーツ・ザ・ボス」からの曲なのでそちらを。D−3は「ライヴ!」からなのでそちらを。というわけで、ジャック・マクダフの深みにはまるきっかけとしては最高のショウケースではないかと思います。

「HOT BARBEQUE」(PRESTIGE RECORDS 7422)
BROTHER JACK MCDUFF

 コテコテの4人組。レッド・ホロウェイもジョージ・ベンソンもジョー・デュークスも絶好調で、(音楽的内容は違えど)マッコイ、ギャリソン、エルヴィン期のコルトレーンカルテットにも匹敵する最高の顔ぶれ。1曲目の8ビートのブルースは全員で「ホット・バーベキュー!」と叫ぶという演奏で、なんのこっちゃねん、と問いかけても、だれも答えてはくれない。とにかくホットなバーベキューなのだ。凄腕のミュージシャン4人に「ホット・バーベキュー!」と何度も何度も声をかけられても、リスナーとしてはどうすることもできない。2曲目の「パーティ・イズ・オーヴァー」というのはスタンダードだそうだが、このひとたちの手にかかるとほとんどブルースと言っていいですね。マクダフの細い音色でのソロがファンキーだ。3曲目のマクダフ作曲のシャッフルっぽいブルースは、めちゃくちゃシンプルなのにこの4人にかかると見事な「作品」に仕上がるのはまさに魔法である。ベンソンのギターが心地よい。4曲目は「ヒッピー・ディップ」という曲で、珍しく凝ったテーマ(3人でハモるテーマがかっこいい! 安定したフィンガリングと粒だった音色のベンソンの上手さよ!)と構成だが、ソロに入ってみると歌もので、良い感じのソロが続く。しかし、このテーマ、何度聴いても癖になる、というか、心に残る。5曲目、つまり、B面の1曲目はアフタービートを効かせたノリノリのブルースでこういうのをやらせたらこの4人に敵うものはいない。6曲目の「クライ・ミー・ア・リヴァー」はホロウェイがアルトに持ち替えて切々とテーマを歌う。マクダフのロングソロは物悲しすぎる! すばらしい。ラストのアップテンポのブルースは、ホロウェイはアルト。ホロウェイもベンソンもビバップ的なフレーズを吹きまくり、弾きまくる。マクダフのソロも圧巻。いやー、ホットなバーベキューを堪能しました。傑作。