「WEST COAST 1945−1947(UPTOWN RECORDS UPCD27.74)
HOWARD MCGHEE
ハワード・マギーというとパーカーとの共演作などでは、「もしかしたらガレスピーよりうまいんちゃう」的な超絶技巧のバッパーという感じで、正直、当時のマイルスなど足下にも寄せ付けないようなすばらしいトランペット奏者という認識でいたのだが、このお宝的な放送音源と当時78回転で出たらしいスタジオセッションを聴くと、トランペット奏者としてはもちろんなのだが、ウエストコーストにおけるリーダー的存在としてのマギーが見えてくるようだ。有名リーダーのもとでバリバリとソロだけに専念するのではなく、曲とかバンド全体のバランスや構成に気を配り、それにぴたりと合うようなソロをする(編曲が、デッドコピーではなく、オリジナルなものであることも注目)。だから、マギーのソロもバップオンリーではなく、ときにもう少し古いタイプのニュアンスも感じられるようなものだったりする(考えてみたら、レッド・ロドニーもそういう演奏あるよね)。バーノン・ビドルというピアノもときおり妙な跳ねるノリを示しながら、スウィングっぽさのあるソロをするし、ふたりいるテナー(ひとりはテディ・エドワーズ。クラリネットでのソロを聴くと完璧にスウィング)の片方が野太い音色でホンカー的なブロウをする、スウィングスタイルのひとなのも面白い(JDキングというひとのほうかな?)ひとつのパッケージショウとしてちゃんと成立していて、バップ曲、ボーカル曲(どのひともうまい)、どスタンダード、スウィンギーなナンバー、ブギウギつーかロッキンなブルース曲などを取り混ぜている。私は、マギーやソニー・クリスの熱いブロウがひたすら続く、ジャストジャズコンサート的なものなのかと思っていたら、もっと深く、なおかつ当時の黒人ジャズシーンの断面をきっちり切り取った、意味深い内容だった。後半は、フィロとメロディックに吹き込んだ当時の78回転盤。テーマはバップっぽいものも多いが、マギーのソロはアクロバティックで、ロイ・エルドリッジのようでもある。なにより、テナーのふたりは、テディ・エドワーズがスウィングっぽくブロウするうえ、JDキングというテナーがかなり野蛮な感じで吹くタイプなので(ベン・ウエブスターというかコールマン・ホーキンスというか)、かなりびっくりする。ものすごく詳しくて、貴重な写真も満載のブックレットもついているので、ものすごーくお買い得。