「コレクリトリオ」(OJAMA−002)
ミドリトモヒデ・栗田妙子・是安則克
これは本当にすばらしい作品です。一曲一曲をなめるように味わうことができる最高の演奏。繰り返し聴けば聴くほど味わい深くなりる奥の深さ。これこそ「ジャズ」でしょう。ミドリトモヒデさんの生演奏を残念ながら私は聴いたことはない。今は大分におられ、サックスにエフェクターをかけた独特の世界を創造しているが(youtubeにいろいろあった)、このアルバムの録音のころは東京でこういうかなりストレートアヘッドな演奏をしていたようである。メンバーが栗田さん、是安さんなので、この三人の演奏ならばいいに決まっている。2011年の9月に是安則克さんが亡くなっているので、この録音はその一カ月ほどまえの演奏ということになるが、そんな様子は微塵も感じられない。いつもどおりにあたたかいベースである。一曲目からその魅力は爆発し、どの曲でもたっぷりフィーチュアされる。アルトは、ぶりぶり鳴らさない、息の抜き方を大事にする、ポール・デスモンドやリー・コニッツに通じるような、繊細で壊れやすいものを大事に包むような吹き方(4曲目など顕著)であり、そしてときに鋭い吹き方もあって(5曲目とか。「夏の医者」というタイトルが興味深い)、なんとも好ましいひとだ。栗田さんの絶妙なピアノの存在感はすごくて(5曲目の途中の無伴奏ソロとか聴いていて涙が出そうなすばらしさです)、いつまでも聴いていられる感じ。というかこのトリオ自体が延々といつまでも聴いていられるような恍惚感にひたれるのだが、あまりにガーッと力任せに高揚するような展開がないことがカギなのかもしれないと思った。そんなことはあまり言われていないのかもしれないが、超重要作ではないかと思ったりしております。たっぷり70分だが、充実の作品。傑作であります。淡々とした文章のなかに是安さんへの想いがあふれているライナーも必読です。