「STEVE’S MIRROR」(SOUL NOTE 121334−2)
GIANNA MONTECALVO
たぶんソプラノのロベルト・オッタヴィアーノが参加しているから購入したのだと思う。ヴォーカル(ジャンナ・モンテカルボ」と読むらしい)のリーダー作なのにジャケットはソプラノサックスだけ……というのは変だなあと思っていたが、ライナーを読んで納得。このヴォーカルのひとはスティーヴ・レイシーのセミナーなどを通してレイシーに深い影響を受けているらしく、レイシーの死がひとつの契機となったプロジェクトのようだ。オッタヴィアーノは周知のとおりレイシーに深い影響を受けているソプラノ奏者で、レイシーに捧げる二枚組アルバムやマル・ウォルドロンとのデュオなども出している。なので本作にはオッタヴィアーノの参加は不可欠であったように思う。全曲レイシーの曲もしくはレイシーが関わった曲(ラストに入ってる表題曲の「スティーヴズ・ミラー」は「フォレスト・アンド・ズー」のライナーノートにあるレイシーの文章を歌詞として使用したピアノのジャンニ・レノーチの曲)で固めた超意欲作。ヴォイスをまじえたフリーなインプロヴィゼイションの部分(めちゃくちゃかっこいい)もあるが、音楽としてはかなりストレートなジャズだと思う(とくにヴォーカルのスキャットにそれを感じる)。しかし、形態がどうであれ、とにかくメンバー全員のテンションというか俗な言い方をすれば「やる気」がすごくて、ひしひしと伝わってくる。「くつろいだセッション」みたいなものからは一番遠い演奏だと思う。5曲目のフリーなインプロヴィゼイションのソプラノなど鳥肌が立つほど。8曲目の「ボーン」はドラムとヴォイスのフリーなデュオで最後にテーマが出る。すばらしい! どの演奏もアレンジがすごく練られていて聴きごたえがある。なんというか、参加メンバー全員がレイシーを好き過ぎてるような気がする。メンバーの(とくにリーダーのモンテカルボの)レイシーに対する思いが結実した、鮮烈で透明感とリリシズムあふれる傑作だと思います。なお、2曲目に間章に捧げられた「ブルース・フォー・アイダ」が取り上げられている。