「BEBOP REVISITED,VOL.4」(XANADU RECORDS XANADU197)
JAMES MOODY/BENNY GREEN
このレコードは学生のころ、関学の後輩(私は関学ではないけど、同じエリアでジャズをやってると先輩後輩関係が生じるのです。芳垣さんや大原さんと私、みたいに)のトロンボーン吹きだったF君が、いらないから1000円で売るといったので買ったのです。聴いてみて、F君はなんと馬鹿なのだろうと思った。それぐらい内容がいいのである。私は当時からベニー・グリーンが大好きで、ベニー・グリーンが入ってたらどんなものでも聴きたいというファンだったので、このレコードはうれしかった。A面は、ジェームズ・ムーディーのセクステットによる演奏6曲で占められている。B面は、最初の4曲がジェームズ・ムーディー・セクステット(A面とはメンバーがまったく違ううえ、トロンボーンがベニー・グリーン)、残りの4曲がベニー・グリーン・クインテット(テナーがバッド・ジョンソン、ドラムがロイ・ヘインズと、面子が豪華)という構成になっている。ジェームズ・ムーディーはアルト、テナー両方吹くが、ここでの6曲+4曲は全部テナーなのでうれしい。まず、A面の6曲だが、なんというか「バップ初期!」という感じでめちゃいい。トランペットのアーニー・ロイヤルのソロも予想以上にかなりバップ的でうまいし、勉強になります。トロンボーンのテッド・ケリーもベニー・グリーン的な中間色のあるバップさで楽しい(多少もたつくのもご愛敬。バラードでもええ味出してまっせ)。そして、ムーディーはかなりトリッキーなフレーズも含めて、いかにもビバップ的である。パーカーやソニー・スティットとちがうのは、ちょっと抽象的で、(音色も含めて)もさっとした印象であることぐらいか。5曲目の「ビッグ・アンド・リトル・E」という曲はアーニー・ロイヤルの曲だが、まさに典型的なバップナンバーだと思う。ムーディーのソロも、わざと変なスケールを使ったりして、モダンさを強調している。6曲目の「ス・ワンダフル」も、いいアレンジ。B面に行くと、最初の4曲はトロンボーンがベニー・グリーンになったこともあり、ぐっとソロがモダンに感じられる。ボーカルにバブス・ゴンザレスが参加しており、音楽的にどうの、という以前に、これはまさにバップ以外のなにものでもない。もう、美味しくって美味しくって仕方ないノベルティなサウンド。ただし、ムーディーのソロはどちらかというと豪腕でねじ伏せるような、荒っぽいものかも。デイブ・バーンズのトランペットもアーニー・ロイヤルに負けじとがんばっている(やや負ける)。でも、(まあ好みもありますが)やっぱりベニー・グリーンですね。それに、バブズ・ゴンザレスが場をさらう。こういうバップ初期の感じは、ハードバップだのファンキージャズだのになってからは味わえないもので、大好きであります。残りの4曲はベニー・グリーンクインテットだが、1曲目のバラードのグリーンのすばらしい表現(テーマを吹くだけでめろめろ)を聴いてくれっ。アレンジは、ちょっとあのブルーノートのタレンタインとか入ってるアルバムの雰囲気もあるぞ。2曲目はグリーンお得意の循環で、管楽器ふたりが掛け合いでテーマを吹くやつ。バッド・ジョンソンは相変わらず、音が殺人的にでかくてツブシになりかねない感じだが、グリーンの快調なソロで全部OK。3曲目は「ラ・ヴィアン・ローズ」。バッド・ジョンソンのスウィングスタイルの演奏も、この曲にははまりすぎるほどはまっていてすばらしいの一言。ほかのひとならこうはならん。こういった通俗曲を、いじることなく見事にストレートに聴かせるのもこのころのジャズマンならでは。最後は短いブルース。カップリングだが、便宜上ジェームズ・ムーディーの項に入れておく(最初に名前が出ているし、参加曲も一番多いので)。