「FIVE FOR JOHN」(JANDO MUSIC VVJ 089)
DADO MORONI
イタリアジャズシーンの大物(といっていいですよね)ピアニストで国際的に活躍するドド・モローニが、50歳を機にコルトレーンに捧げたアルバム(というか、コルトレーンとその周辺(?)に捧げた感じか?)。私はイタリアのジャズにはめちゃくちゃうといのだが(それ以外もうといけどね)、そんな私でも知っているぐらいだから、よほど有名人だろうね、ドド・モローニ。テナーが同じくイタリアの雄マックス・イオナータ、ドラムとビブラホンはスペシャルゲスト的にアルヴィン・クイーンとジョー・ロック。ベースはマルコ・パナスシア(と読むのか?)というひとでニューヨークで長く活動しているらしい。1曲目はモローニの曲で、いきなりバーン! と景気よくはじまる、いかにもコルトレーンが書きそうなモーダルな曲である。リズムもアフロな感じが取り入れられている。先発のモローニのストイックでがっちりしたソロのあと、イオナータ(私がこのアルバムをなぜ聞いたのかというと、もちろんイオナータがフロントだったからです)、ジョー・ロックの真っ向勝負でのソロはどちらも余裕を含みながらもストレートな演奏。2曲目はネイマをクラーベっぽいリズムも取り入れながらビブラホン中心にやや幻想的な感じにアレンジした演奏。ネイマという曲はどういう風に料理してもええ曲や。至上の愛のリフが響くなか、イオナータはどちらかというと凛とした感じではなく「バラード」としてこの曲を吹いているようで、かっこいい。3曲目は「バット・ノット・フォー・ミー」で、これもコルトレーンの愛奏曲である。ジョー・ロックが弾け、ドド・モローニが気合いの入ったソロをぶちかます。そして、ベースソロも歌いまくりですばらしい。4曲目はこれもコルトレーンのおなじみの「アフター・ザ・レイン」で、ビブラホンとピアノ、ドラムを中心とした昂揚感がずっと持続する。テナーは不参加。5曲目はなぜか突然「EJブルース」。イオナータではなくジョー・ロックがテーマを弾く。ベースがフィーチュアされ、アルヴィン・クイーンはいかにもエルヴィン、という感じのドラムを叩く。なんかそのあたりはいまいちピンと来ないです。このパートはエルヴィンがコルトレーンカルテットに在籍した、という意味でのコルトレーンの音楽ということか? 抑制のきいたドラムソロも含め、全員、ナイスなソロが続くが、たぶんライヴだったらもっとへろへろになるまでガンガンやっていたのかなあ。6曲目はマッコイ・タイナーの「ラティーノ組曲」で、マッコイの「ラテン・オール・スターズ」というアルバムに入っている。なるほど、コルトレーンに捧げるアルバムだと思っていたが、「コルトレーン一派」に捧げるアルバムなのだ。ジョー・ロックのめちゃくちゃノリノリかつゴリゴリのソロ、マローニのたしかにマッコイに似たソロ、アルヴィン・クイーンのめちゃかっこいいソロなどが続くが、おい、イオナータはどこに行ったのだ! 3曲続けて不参加であります。7曲目はこれもまたマッコイの「リアル・マッコイ」に入ってる「コンテンプレイテイション」で、カルテットでの重厚な演奏。ジョー・ロックの硬質なビブラホンがフィーチュアされている。ジョー・ロックはすばらしい演奏だと思うが、本家の「リアル・マッコイ」ではジョー・ヘンダーソンのテナーも入っていたのに、なぜかイオナータはオミットされている。まあ、リーダーの意向なのでしょう。8曲目はゲイリー・バーツの曲で、そういえばバーツは上記マッコイの「ラテン・オール・スターズ」にも入っていた。「曲」といっても、コテコテのリフブルース。この曲もテナーの入ってないカルテットでの演奏。ピアノソロ、それに続くベースソロもビブラホンもめちゃくちゃいいんだけど、イオナータはどうした。9曲目は「テーマ・フォー・アーニー」で「ソウル・トレイン」に入ってる曲。ビブラホンとピアノをフィーチュアした渋い演奏。10曲目はおなじみ「MR.PC」なのだが、テーマもソロもジョー・ロックがバリバリとかます。ビブラホンとドラムが活躍する曲でめちゃくちゃかっこいいのだが……イオナータはどうした! ラストはモローニの曲で、ゆるいラテン。イオナータも参加しているがあまり存在感がない(と私は思う)。結局マックス・イオナータは本作ではゲスト扱い(4曲だけ?)だった。コルトレーンに捧げるということで、ひりひりするようなやり取りがあるのか、と思っていたが、どちらかというとくつろぎのなかに見いだされるコルトレーン(とその一派)の音楽……という感じだった。基本的にはアトランティック時代のコルトレーンということだったのでしょうか。イオナータにはもっと吹いて欲しかった……と思うがそれは私の個人的な感想です。