「THE LAST CONCERT − DANKESCHON」(SILKHEART SHCD151)
BORGMANN/MORRIS/CHARLES TRIO
1998年3月26日に亡くなったデニス・チャールズのラストレコーディングであり、彼に捧げられたアルバムだが、録音日は亡くなる数週間まえで同じ3月なのである。ここでのデニス・チャールズは圧倒的なドラミングを見せて、ときに共演者を鼓舞し、ときに猛烈な刺激を与え、ときに演奏をリードし、ときにひたと寄り添うすばらしい演奏を披露している。正直、この数週間後に亡くなるとはだれが予想したであろうか。デニスだけでなく、感情の滲み出たライナーを書いているベースのウィルバー・モリス(何カ所かフィーチュアされるソロでの骨太の豪放な表現は心に突き刺さる)も、そしてトーマス・ボーグマンも超ハイテンションなうえにリラックスしており(矛盾のようだがそうではない)、最高の演奏を聴かせる。とくにボーグマンのテナーは私好みで、ふたりの猛者に煽られて、太く個性的な音色でうねるようなテナーを吹きまくる。チャールズ・ゲイルやデヴィッド・ウェアを連想せずにはおれない。力強いバイブレーションには、アイラーも念頭に浮かぶ。1980年代からキャリアをスタートさせた、とあるからまだ若いのに、かなり古い時代からのスリージャズの語法を完璧に自分のものにしており、ブロッツマン、ヴァンダーマークやグスタフソンらに比べてもブラックミュージックの伝統に直結した音楽的な言葉を使っているように思う。やはり、聴いてまず頭に浮かぶのはさっきも書いたようにウェアやゲイルなのである。共演者を見ても、インプロヴァイズドのひとが多いが、ボーグマンはそういうなかにあって、強くジャズをひきずっている感じがして、そこがいい。2曲目の冒頭ではエジプトの蛇笛みたいなやつ(複音が出せる)を延々吹いていて、ほぼ音程がない楽器なので、それがどうなるのかなと思っていると、リズムがドシャーンと入ってきて力強いランニングが始まってもずーっと音程が三つぐらいのままひたすら吹き続ける。これはいい! かなり大胆なアプローチだと思うが、ちゃんと即興演奏になっているし、音楽になっている。そしてそのあとに続くソプラノの狂気のような凄まじいソロ。圧倒的である。どちらも30分以上ある1曲目と2曲目に比べて、最後の曲は7分と短いが凝縮されたエッセンスを感じる。途中でボーグマンがマイクのないところに行ってしまったのかマイクが壊れたのかどちらかわからないが、急に音がほとんど聞こえなくなってしまうがそれもライヴ感があって、さほど気にならない(ふたたび吹きはじめたときはちゃんと聞こえる)。このトリオは1995年にはじまり、デニス・チャールズの亡くなるときまで続いたそうです。なお、このトリオはだれがリーダーなのかわからない。本作はデニス・チャールズのメモリーのためにリリースされたとあるので、デニス・チャールズの項に入れようかとも思ったが、ライナーを書いている点と、このトリオはドラムを変えてその後も継続したことを考え、ウィルバー・モリスの項に入れた。