misaki motofuji

「YAGATEYAMU」(HITORRI HITORRI−971)
MISAKI MOTOFUJI

 バリトンサックス奏者として最近あちこちで名前を聴く本藤美咲さんだが、一度生で聴きたいと思っていたらソロアルバムが出た。しかもライヴである。バリトンサックスのソロというといろいろ先駆的なものを思い描くが、そういったものとは思い切り隔絶した独自の表現で、とにかくすばらしかった。鈴を鳴らしてるの? と思ったぐらい繊細な小さな音ではじまり、それが延々続くのだが、リードを軋ませて高音を出し、それをコントロールする技術が半端ない。そこからさまざまな展開を経て、ドラマがつむがれていくのだが、基本的にはめちゃくちゃ抑制された表現が続く。しかし、それが心地よい。偶然発生する音やノイズ、仕込んであったフィールド録音の音なども含めて完全にすべてを把握してオーケストレイションしながら、しかも、その場の即興を押し出していく。最後の最後にフリーキーな表現も交えるのだが、最初からそこまで真剣に聴いていくと、一種の夢心地というかハイになってしまい、踊り出したくなる。いやー、これはすばらしい。私は、落語に求めるのは「なごみ」で音楽に求めるのは「刺激」なのだが、ここには「なごみ」と「刺激」の両方がある。理想じゃん! 傑作!