「BASIC BRIMFIELD」(AECO 0021)
FAMOUDOU DON MOYE QUARTET
ウィリアム・ビリー・ブリムフィールドというトランぺッターをフィーチュアしたドン・モイエのカルテットの、スイスでの1982年のライヴ。なんのデータもライナーもないCDなので、ネットで調べてみると、ブリムフィールドは1938年生まれなので、このとき44歳。バリバリの絶好調である。しっかりした音色でハイノートも出るし、フレーズもいい。しかし、このライヴの一年後に彼は他界している。シカゴ生まれで、AACMに参加。あのジョセフ・ジャーマンの「ソング・フォー」にも入ってるらしい(持ってるけど覚えてなかった)。フレッド・アンダーソンとよく演奏しているらしい(ディスコグラフィーによると、アンダーソンのCDにも何枚か参加していて、それらは私は全部聞いたことのあるやつだった。で、本作だが、このアルバムがめちゃくちゃいいのだ。テナー、ソプラノにアリ・ブラウン、ベースが有名なエシート・オクン・エシートだが、4人が一丸となった演奏ばかり。曲もドン・モイエ、アリ・ブラウン、ブリムフィールドらが持ち寄っていて、非常に意欲的だ。なかでもエシートのベース(エレベもウッドベースもどちらも)は凄まじく、また、アリ・ブラウンは絶好調で、たとえば自己リーダー作やカヒール・エリザバーとのリチュアルトリオでの演奏などよりもいいのでは、と思えるほどの圧倒的な実力を聴かせてくれる。いやー、こんなすげーアリ・ブラウンが聴けるだけでも本作の価値はあるというものだ。リチュアルトリオなどでは、けっこうしみじみ聴かせる感じだと思うが、ここではフリーに走らず、きっちりとフレーズを押さえつつも、上手さと迫力が際立つブロウで、スピード感も抜群だ。ちょっと感動したよ、わしゃ(もちろん例によってピアノも弾いてます)。ドン・モイエはアート・アンサンブルのときとちがい、バリバリのジャズドラマーぶりを発揮している。肝心のブリムフィールドは、これがまたいきいきしたすばらしいプレイで聞き惚れる。エシートのベースは、ふつうのジャズベーシストの倍ぐらいは音数が多く、まるでソロをしているかのような縦横自在のベースラインがソロイストを鼓舞しまくる。フリージャズではなく、いわそる70年代的モードジャズということになるのだろうか。ドン・モイエのリーダー作にこなお宝があったとは……。傑作!