yumiko murakami

「BLUE LIGHT OSAKA」(YMKIへの1)
YUMIKONIAN’S ORCHESTRA

 亡くなった村上ユミコさんが率いていたユミコニアンズ・オーケストラのアルバム。1994年録音なので、もう20年もまえのアルバムなのだ。そんな気がしないなあ。亡くなられたのはたぶん15年ぐらいまえだ。今、このメンバーリストを見ていると、ご本人とはなんの面識もなかった私ですらいろいろ感慨が湧いてくるが、そういったことではなく純粋に本作の音楽としての内容について記すと、まず最初にめちゃくちゃ傑作だということを言っておきたいと思う。純粋な自主制作盤のようだが、たいした作品なのだ。当時の関西ジャズシーンの雄を集めた豪華なメンバーだが、その人選にもリーダーのセンスが光っている。藤井郷子オケやカーラ・ブレイオケなどでもいつも思うのだが、ビッグバンドのリーダーの大きな役目は「人選」なのだ。その時点で、かなりの仕事を終えているといっていいかもしれない。1曲目、いきなり女性ボーカルというかヴォイスが炸裂し、聴き手はその世界に引っ張り込まれる。いや、そんな生易しい感じではなく胸倉をつかんで引きずり込まれるというぐらいのパワーがある。2曲目は鬼が近づいてくるような太鼓ではじまるタイトルナンバー。ドラムとギターのデュオのバックでブラスが咆哮する。芳垣安洋の凄まじいドラムとフリーなギターとオーケストラの3者がぶつかりあったあと、バリサクの利いた和風の旋律の8ビートになり、数人のソロが展開する。3曲目はバラードだが、冒頭で石をパーカッションとして叩いての演奏があり、その凛とした空気は甘々のバラードとはまるでちがう。トランペットソロもクールだ。4曲目はラテンリズムの曲で、パーカッションとエレベのデュオからテーマに入る。かなり難しい曲だと思う。吉野竜城の短いチューバソロのあと荒崎英一郎の個性爆発のソロ。もっと聞きたいぞ。5曲目は躍動的なパーカッションに乗ったヴォイスとケーナ(?)が独特の雰囲気を設定する。ケーナ、凄い。めちゃかっこいい。ラストの6曲目は不穏なブラスロックというか映画音楽的なテーマの曲で、あー、この曲やりたいわー、と思わせるような魅力がある。リーダーのかなりエグいピアノが炸裂。トランペットソロとギターソロもすばらしいです。というわけで、リーダーの急逝は本当に残念だが、それだけにこの作品を大勢の人に聴いて欲しいと思うものであります。傑作。