jun nagami

「マダム・ギター」(NYON RECORDS NJ−004)
JUN NAGAMI

 聞いたことのない人だな、と思っていたが、実はそうではなかった。でも、真剣に聴いたのははじめて。片山広明が入っているので買ったのだと思うが、しばらく聞かずにほっておいた。今回、なにげなく聞いて驚いた。めちゃめちゃええやん! どうええか、というと表現しにくいのだが、微妙なところで私の好みなのである。宇多田ヒカルもヒトトヨウも何とかかんとかも全然興味ないが(エゴ・ラッピンのボーカルはいいと思うけど、あれはジャズ〜ブルースの範疇だからなあ)、このひとはいいと思う。ネットでプロフィールをみると、そうか、ハイタイド・ハリスとかと一緒にやってた人なのか。ギターは味わいがあり、ごつごつした手応えのある、いわゆるブルースのひとの弾き方。ボーカルは、素直で、訥々としているのに、ジャンプ&ジャイヴしており、歌詞とメロディーがいったいになって心にひっかかって、そのままぐんぐん中に入り込んでくる。歌詞カードだけ見ていると、最近のジャパンポップみたいな感じだが、、それに、なんともいえないドスのきいたリズム、メロディーがついている。ブルース、演歌、ファンク、フォークミュージック、もちろんロックもまるのみにした感じ。 ええわー。最高。ボ・ガンボスとかブルース系やその周辺の人脈がメンバーとなっているが、仙波清彦師匠の入った曲もあり、また、全編、片山さんのテナーが唸る。 「奇妙な隣人」の歌詞はこんな感じ。「長見の家の朝は仏壇に手を合わせて幽霊になったオヤジに飯をあげる。オヤジだけがいつも飯。残りの人々はパンを食う……」……ええなあ。もしかしたらめちゃ有名なひとかもなあ……。世間は広い。

「GUITAR MADAM」(P−VINE RECORDS PCD−28004)
MADAM GUITAR NAGAMI JUN

 このひとの歌は好き。歌詞も曲も好き。ギターもきらいではない。しかし、やはり私自身がこういう日本語ブルース的なものになじみがないせいか、なんというか、距離というか疎外感というか、音楽にとけ込めない自分がいる。ようするにボーカル中心の音楽は、どうしても慣れないんです。純粋にフツーに楽しめばいいのに、ソロとか期待してしまうんだよなあ。とくに本作はメンバー(というかバックバンド)が豪華で、期待してしまうのもしかたないのでは。だって梅津さん、片山さん、松本治さん、後藤篤さん……これは期待するでしょう? そういう聴き方はいかんのだ! でも、ほとんどの曲は気に入ったし、とくに「おとうさん・アレどこいった?」「ラ・ピクニック」「わっかてるのかなあ」「ヨコのスカ」「VS」「あたしの話」「二人のムーンシャイン」などがよかった(ほとんど全部か?)。なんというか、歌詞が身につまされるのでありました……とか言っていうるうちに、また聴きたくなってくるという麻薬のようなアルバムでもあるな。ひとの声って怖い。