「AMULET」(LEO RECORDS CDLR231)
SAINKHO NAMCHYLAK/NED ROTHENBERG
サインホというと、超絶ヴォイスインプロヴァイザーの印象が強いが、本作ではそういった顔も見せつつ、どちらかというとトゥバの民謡っぽい感じを前面に出した曲が多い。どっちもめちゃくちゃかっこいいんだけどね。実際には13曲中、トラディショナルは2曲だけなのだが、あとの曲もそういう雰囲気を醸し出しているのだ。そして、ネッドも循環呼吸とハーモニクスを駆使して複雑なリズム、ハーモニーでサインホをときにバックアップし、ときにからみつき、ときにリードする。アルトとバスクラはもちろん、おなじみの尺八もすごくいい感じで演奏されている。そして、雲を切り裂き、山を砕くような雄叫びから、月まで届くようなハイトーン、オルガスムスのときの叫びを思わせるような生々しい官能的なあえぎ(特に7曲目のソロとか13曲目とか)、宇宙のどこかで使用されている言語のような謎めいた言の葉、野獣が呻いているような濁った低い声など、いつものサインホの必殺技が組み合わさることで破壊力を増して炸裂する。いやー、人間って凄いものなんですね、といういつもの感想になってしまう。それはサインホだけでなく、ネッドにも向けられる言葉である。サックス一本でよくもまあここまで……といつも思うのである。ネッド、サインホそれぞれのソロの曲も入ってます。それにしてもネッドも、サインホも、これまで私が聴いたリーダー作で傑作でなかったためしがないというのはほんとすごいひとたちですなー。