「UNA OFRENDA A LA AUSENCIA」(RELATIVE PITCH RECORDS RPRSS0123)
CAMILA NEBBIA
いやー、すっかり感心というか感動しました。ティム・バーンなどに学んだというカミラ・ネビアはアルゼンチンのテナー〜ソプラノ奏者で本作はテナー中心の無伴奏ソロ作品。普段はフリージャズだけでなく、アルゼンチン音楽とジャズを融合させたオーソドックスな演奏もしているらしい。ここではサックスのほか、朗読的なこと(2曲目)やエロクトロニクスを使った演奏なども行っている。FXと書いてあるのは、ミキサーを使って電子音的なノイズを出しているのか? 短い16曲の演奏が収められていて、ひとつの大きな流れが感じられる構成になっている。1曲目の冒頭部分がとにかく強烈なハーモニクスではじまるので、それで持っていかれてしまう。モードジャズ的な演奏もめちゃくちゃ上手く、なにしろ音がすばらしいので、ひたすら聞き惚れる。フルトーンで鳴らしたときの太くたくましい音も、ささやくようなサブトーンも完璧である。マルチフォニックスを駆使した演奏もすこいし、グロウル、スラップタンギング……もう、なんでもできるのだなー、としみじみ。しかも、もちろんただのテクニックの開陳に終わらず、演奏内容のクオリティも異常に高く、音楽的である。優しくメロディックに吹いたり、バリバリの主流派ジャズ的な演奏をしたり、爆発的な「フリージャズ」的な演奏をしたり、朗読したり、エレクトリックノイズを駆使したりと千変万化するが、その底流にはひとつのしっかりした、ぶれない主張があるように思える。かっこよすぎる。ぼんやりとした感じのジャケットも意味深である。2023年におけるソロサックスの理想郷のひとつであろうと思う。うーん……凄いね! 傑作。