「SWEETS SUGAR DADDY」(BLUES INTER ACTIONS PCD−1620)
JIMMY NELSON WITH ARNETT COBB & THE MOBB
ブルースのことはまるで知らないのだが、ジミー・ネルソンというひとは「T−99 BLUES」というヒットを持っていて、「ジミー・T−99・ネルソン」と呼ばれていたらしい。18曲収録されているがセッションは三つにわかれていて、1〜10(つまり収録曲の半分以上)はジミー・ネルソン以外のメンバーが一切不明である。テナーも入ってて、なかなかええ感じのソロをしているがコブではない。バリトンも入ってるなあ……。ピアノとオルガンが両方入っているというゴージャスな編成である。女性コーラスも入っていて、相当金もかかっていると思われるのにメンバー不詳というのはなあ……。ギターはジョニー・ハーツマンという説もあるそうで、ソロを弾かせると個性派でめちゃくちゃいい感じであるが、カントリーっぽい曲などでも溌剌としてリズムを刻む。オルガンも上手いし、いずれ名のあるひとたちなのだろう。11〜18曲目はバックがアーネット・コブが仕切っているバンドでの二回のセッションで、ギターにクラレンス・ホルマンが、アルトにジミー・フォードが入っていて、コブの「チタリン・シャウト」を思わせる。クラレンス・ハラマンは和田昇のライナーでは「伝説の……」と書かれているが、これはボビー・ブランドの有名作に参加しているからか? 個人的にはブラックトップのグラディ・ゲインズのアルバムなんかにも入ってるし、あまりそんなで伝説的なイメージはないがブルースファンにはそうなのか? ネルソン以外のミュージシャンが全部アンノウンな1〜10曲目も楽しいが、11曲目以降、アーネット・コブのバンドがバックをつける曲になると、いきなりコブの世界観がグワーンと前面に出る。11曲目の冒頭など、絶対に聞き間違うことないコブのテナーからはじまり、イントロが終わるときの微妙なタメなども震えるようなかっこよさである。全体にストレートなブルース、R&B、ポップ系などがバラエティ豊かにちりばめられていて、ネルソンも曲に応じてワイノニー的であったりポップブルース的だったりバラード的だったりソウル寄りだったり軽いロックンロルー的であったり……と奥の深さを見せてくれて飽きない。めちゃ上手いし、リズムもいいし、アクが少なくて聴きやすいのだが、日本語ライナーにも、チャールズ・ブラウン、ジョー・ターナー、ブルー・ブランド、エディ・ヴィンソンなどの名が挙がっていて、たしかにそれらのすべてに似ているのだが、じつはそういう器用さが大ヒットにつながらなかった理由かもしれないと思ったりした(勝手な言い分)。でも、めっちゃ上手いひとですよ。コブのソロはやはり存在感が違う感じ。ちらっと吹くだけで「コブだ!」とわからせる。日本語ライナーに「アーネット・コブとコンラッド・ジョンソンのホーン陣もでしゃばりすぎない」と書かれているが、そういう認識なのか。まあ、このあたりの感覚は永遠に相容れないかもね。私は主役であるボーカルにホーンがぎりぎりまででしゃばって、丁々発止という感じになる演奏が好きです。なお、17曲目ではブルース界隈ではおなじみのトランぺッター、カルヴィン・オーウェンスのすばらしいソロがコブの超個性的なソロとともにフィーチュアされている。ラストの「カントリー・ウェディング」という曲はひたすら「田舎の結婚式! 田舎の結婚式!」と絶叫していてすごい。