willie nelson

「TWO MEN WITH THE BLUES」(BLUE NOTE RECORDS 50999 5 04454 2 4)
WILLIE NELSON WYNTON MARSALIS

 とにかくめちゃくちゃ評判がいい。このふたりの顔合わせならこうなるだろう、という最高の結果を生んでいる、ということらしい。小編成のバンドだが、ほかのメンバーの演奏もすばらしい。でもなー……このふたりならこうなるだろう、と思ってたらこうなりました、という以上のものではない。こんな曲をやって、ネルソンはこう歌うだろう、マルサリスはこう吹くだろう……それは決して聴き手の期待を裏切らないし、めちゃくちゃ逸脱したこともしないし、もちろんものすごく上手いし、伝統も今も知り尽くしているし……しかし、なにかピンとこない。ネルソンとマルサリスがぶつかりあったらもっとすごいことが起きるのではないか、と思ったらこれかー。いやいや、そっちやないねん、そんなこと望んでいない。こういうくつろいだ表現のなにが悪いのだ、というひとも多いと思うが、せっかくの両巨頭のぶつかりあいなので「なにか」が起こることを期待していたら、1+1が2になっただけだった。「枯れた味わい」といえば褒め言葉だが「置きに行ってる」という感じかなあ。たとえばジャズ的にいうと、ちょっとアウトしたようなモダンなフレージングを混ぜて「ジャズでしょ?」と言いつつ、すぐにガットバケットな雰囲気だったりジャンプな雰囲気だったりノスタルジックな感じに戻る。それ以上やるとネルソンがやりにくいからだ。「では、私はこんな感じで……」「お、それでいいんですか」「私はこんなのもできるんですよ」「ほほう、それなら私はこんな感じで……」みたいな「互いに歩み寄る」演奏は聴いてもしょうがない。8曲目のドラムソロや9曲目なんかは一種のオールドスタイルのジャズのパロディとして聴けるほどである。しかも、結果としてはこういう具合の「傑作」になってしまうわけで、まあこういうのが聴きたいひとはたくさんいるのだろう。すごく文句のようになってしまったが、マルサリスとクラプトンがやったアルバムよりは好みだった。この顔合わせでのレイ・チャールズ・トリビュート盤もあるわけだが聴いてません。