「BRICKS IN MY PILLOW」(DELMARK RECORDSDD−711)
ROBERT NIGHTHAWK
やっとこのアルバムを手に入れることができた。先ごろ亡くなった小出斉さんが私淑していたひとというのは知っていたが、1909年生まれということはかなりブルース初期から活動しているひとである。そういうひとに小出さんが私淑するというあたりが(なんでかな……)と思って興味を持ったのである。ロバート・ナイトホークといえばマックスウェル・ストリートでいつも路上で弾き、投げ銭をもらっていたストリートミュージシャンとしても知られていて、そのマックスウェルストリートでのライヴ盤を私は聞いたことがないのだが、ぜひ聴きたいと思っている。あと、私にとっては学生時代に愛聴していた「ドロップ・ダウン・ママ」のひとでもある。「スウィート・ブラック・エンジェル」や「アンナ・リー」などの重いブルースはよく聴いた。でも、熱心なブルースファンではないので、聴きたいなと思ってもすぐに忘れてしまう……というわけでずっと探していた本作をやっと聴くことができたのである。タイトルのブリックスというのはレンガということなので、タイトルは「枕のなかのレンガ」ということのはずだ。ナイトホークというのは「ヨタカ」という意味で戦前はロバート・リー・マッコイという名前で演奏していた(こちらの名前も芸名である)。本作は戦後録音の特徴でもある単音とスライド(とボーカル)の見事な組み合わせがすばらしいが、ヘヴィなスローの「ドロップ・ダウン・ママ」の印象から、もっと暗くて重いひとかと思っていた。しかし、こうして聴いてみると、ミディアムやアップテンポの曲も全部すばらしく、物憂いボーカルというが力強くノリノリの曲もあり、長年ひとまえで演奏して客をひきつけてきた、一筋縄でいかないエンタテインメント性も感じる。全体にロールするピアノが効いており(一部はルーズベルト・サイクスの可能性もあるらしい)、バンドサウンドが51年52年のころに確立しているのは、マディとほぼ同じ時期ではないですか。そういう意味でもすごい。傑作だと思います。購入してから何度か聴いたが、何度聴いてもいいものはいいな。