「VERY SHIPPOLLY」(NITECO STUDIO & MUSIC ART NS−0717)
ENSEMBLE SHIPPOLLY
ピアニストでアレンジャーの西島芳を中心に結成されたグループで、ピアノと3人の管楽器奏者によるアンサンブルを聴かせる。これが、パッと聞くだけだと、あー、美しいなあ、ほのぼのするなあ、バンド通りしっぽりするなあ……という感じなのだが、じつはかなりえぐい。「サマータイム」なんて、歌詞以外にどこにサマータイムの要素があるのか! と言いたくなるような演奏で、めっちゃおもろい! 計算されつくしたアレンジと、計算されつくしていない即興が溶けあったり離れたりする。そして、この三人の管楽器奏者は、たんにアドリブソロができる、とか、バスクラとトランペットがひとりで吹ける、とか、いろんな楽器を持ってる、とか……そういう理由で集められたのではないとわかる(まあ、そういう理由も多少はあったかもしれないが)。音色だ。生音でこの3管が奏でる和声は、ほかのひとでは代用がきかないはずだ。みんな、それぞれに個性的ですばらしい音色を持ったひとばかり。そして、ジャズをベースにはしているのだろうが、「音楽」に対するセンスの良さもかなり突出している。考え抜かれて選ばれた三人なのだ。曲はどれもすばらしい。バラエティに富んでいるので一枚のアルバムとしてもよくできている。西島芳というひとの作曲力はすごいと思うが、もっとすごいのはアレンジで、もちろんこのバンドではそのふたつは不可分ではあるが、とにかくこのアレンジは惚れる。聞き惚れる。このアンサンブルを普通に吹いているだけでも、なにかをぶち壊してつぎの地平に行けるのではないか……そんな「従来のジャズの殻を破る」ようなアレンジといったらいいのか……。それぞれのソロもめちゃくちゃよくて(4曲目トロンボーンソロとか泣ける!)、よく「コンポジションと即興が不可分」というような言い方をするが、ここまで作曲とアレンジとソロがひとつになっているグループも珍しいと思う。おそらくは最初からそういうものを作るつもりでメンバーを集めたのだろうが、それが見事に達成されている。なんとも細部まで気配りのされた演奏だろう。そして、なんと伸びのびと自由そうに楽しげに演奏しているのだろう。ときどき入るヴォコーダー(?)のヴォイスも効果的だし、少なくともこのアルバムを聴くかぎりでは「なにもかもうまくいってる」感じだ。一度だけライヴを聴いたが、本当にここに聴かれるとおりの演奏が目のまえで展開していた。「サマータイム」はそのときはじめて聞いたのだが、爆笑しそうになりました。途中からミンガスみたいになって、みんなどこかへ去って行ってしまう……。武井努が書いた4曲目も、有本羅人の7曲目もいい曲だし、ジャケットもいいし、もー言うことおまへん。傑作。