「LIFE IN PERSPECTIVE」(HIRO NOGUCHI COLLECTION HNCL001−1)
PACIFIC BRIDGE
最初にまず結論を書いておくが、このアルバムは傑作だ。一曲目のモーダルな、緊張感のピンと張りつめた演奏を聴いて、心が動かされないひとはいないだろう。リーダーの野口ヒロのトランペットもひじょうに凛々しく、ひとつのアイデアを発展させながら歌としてつむいでいくフレージングは申し分ないし、技術的にもラッパの鳴らしかたもすばらしい。生田幸子のピアノはもちろんいいし、ベースは現在の日本を代表するひとりと私が勝手に思っている西川悟志だから悪いはずがないし、竹田達彦のドラムもこのバンドにはぴったりだと思うが、なんといっても本作の要はテナーの武井努で、彼のこれまでの吹き込みのなかではいちばんいい演奏ではないか。ざらついた触感の、野太い音色もうまく録音されているし、リズムを縦横にくぐり抜けるような独特のソロも爆発しており、めちゃめちゃかっこいい。よくわからないが、たぶんこの五人の顔ぶれでしか表せないような表現なのだろう。その意味で、この五人がもっとも完璧なメンバーなのだ。全員がグループに貢献しまくっている感じがひしひし伝わってくる。オリジナル曲はバラードも含めてどれもすばらしく、「枯葉」とか「ドルフィン・ダンス」といったスタンダードも演っており、それはそれで興味深い演奏なのだが(切り口がいい)、正直なところ、全編オリジナルだったらどれほど完成度の高いアルバムになっただろうかと思うとやや残念かも。とにかく入手してから何度も聴いたが、トランペットがあまり好きではない私が、しみじみこのラッパはええなあ、と聴くたびに思ってしまうのだから、どれぐらい惚れ込んだかわかってほしい。さあ、つぎは武井努のリーダー作が近い将来吹き込まれることを期待してまっせ。