keisuke ohta

「BLUE RONDO A LA TURK」(FIVE STARS RECORDS FSY−511)
KEISUKE OHTA & BILL MAYS

 太田さんといえば、かなり硬派な音楽性のかただと思っていて、これまで聴いたアルバムもライヴも、ヴァイオリンでブロウするというか、こちらの魂を掴んで引きずりまわしてくれるような熱いものばかりだった。だもんで、本作のようにピアノとのデュオでスウィングスタイルの曲ばかりをやるというのはちょっとだけ驚いた。あくまでちょっとだけであって、それはどんな音楽をやっているひとにもルーツがあって、それはそのひとがやっている「楽器」と不可分のものだということを知っているからである。だから、太田さんがこういったジョー・ベヌーティーというかステファン・グラッペリというか、そういったものを取り上げることに不思議はなく、また、正直、聴くまえから傑作であることはもうわかっていた。普段、先鋭的な演奏をしているひとが、機会を得て、あるいはやる気になって、こうしたものを正面から取り上げるとき、それはもう面白いに決まっているのだ。だって、自信がなかったらやらないでしょう。そして、聴いてみたら「ああ、やっぱりな」という感じの傑作でした。このシャレオツな演奏は、ほんとにいきいきとしてスウィングしているし、粋で洒脱で、ふたりの息もぴったりなのだ。選曲もいいし、言うことなし。太田惠資ファンは絶対聴くほうがいいと思う。普段の太田さんの演奏を好きなひとなら絶対気に入ると思う。

「ELECTRIC」(FULLDESIGN RECORDS FDR−2029)
太田恵資×加藤崇之×坂本弘道

 これはぜったいに面白いやろ、と思って買ったら、やっぱり面白かった! なってるハウスでのライヴだが、この日、なってるハウスには音楽の神が舞い降りたにちがいない。常に3人の奏者から惜しげもなく新しい刺激が注入されていて、聴いているあいだはずっと「驚き」続けていることができるという稀有な即興作品。奇跡的な美しさが保たれ、弛緩することはなく、心地よいテンションが最初から最後まで持続する。音色のチョイスも含めて、かなりこまやかな神経が使われてはいるが、聴いている身としてはああ、ただただこの瞬間瞬間が永遠に続けばいいのに……と思いながら浸り続けるだけだ。こういう、聴き手の想像力を刺激してくれる即興がいちばん好きだ。高度な抽象化だけでなく、ベタなメロディーやシンプルなリズムなどもバンバン放り込まれ、それをぶっつぶしたり、育てたり、ひっかきまわしたり……いかがわしいヴォイスもいいし、エレクトリックな音の洪水のなかにアコースティックな音が突然放り込まれたりするのも最高っすね。そしてなにより、めちゃくちゃかっこいい! これこそ即興。楽しい楽しい楽しいっ。傑作です。