「SOLO LIVE AT FUKUSHOJI 感覚の地平線〜福勝寺本堂にて〜」(STUDIO KEN SLMO 0008)
YOICHI OKABE
福勝寺という寺の本堂における岡部洋一のパーカッションソロ。さまざまなパーカッションが使われており、それらによる12の即興が収録されている。基本的には、どの曲にも一定のビート感があり、ゆったりとした、ビート感がない曲でもリズムはちゃんとあるのでたいへん聞きやすい、というか、ノリノリの曲ばかりといってもいい。パーカッションソロで即興か、しんどそうやな、と思っているひとがいたら、そういうものとはまったくちがうと言っておきたい。また、寺で収録されたという雰囲気のためか、それとももともとそういう主旨の演奏なのか、はたまたそういう要素があるミュージシャンなのか、きわめて日本的な香りのする即興である。もちろん、ジャズやブラジル、アフリカ、クラシックの香りもあるのだが、「間」を重視した空間構成や、能・歌舞伎などを連想させるフレージング、仏教的な要素などをこの演奏のなかに見いだすことは容易である。聴き終えての感想は「非常に楽しい」というものだった。観念的で、難解な演奏とは正反対の、クオリティの高いエンターテインメントになっている。しかも、パーカッションのみの即興で、マリンバやグロッケン、シロホン、ヴィブラホンといった音階の出るパーカッションは使用せず、シンプルにいわゆる打楽器のみでの演奏にもかかわらず、フリージャズ的なドラムソロともちがい、ドライヴ感やグルーヴだけで勝負する(和太鼓も含む)民族音楽的な打楽器ソロともちがい、一種のオーケストレイションになっていて、聴き終えたあとの充足度もちゃんとある。小は口琴から大はコンガやジャンベまで用いられ、ひとりのパーカッショニストの持っている多種多様な個性がショウケースのように並べられた、とても親しみの持てる演奏でした。なお、ラストの13曲目はギターカルテットによる「お経」との共演で、これもまた成功しており、すごくおもしろい。この13曲目のコンセプトで一枚アルバムを作ってほしいぐらいツボに来た。