「TIME SERVICE」(IMPROVISED MUSIC FROM JAPAN IMJ−518)
大蔵雅彦
サックスソロ。1曲目、チューブ(?)を使った衝撃の演奏で幕を開ける。これはびっくりした。音楽的にもすばらしいと思う。なにをどうやっているのかわからないが、とにかくおもしろい音だ。これを8分41秒も続けて、その間聴いてるものをひきつけておける、というのはすごいセンスの良さ。なぜかドルフィー的なものを感じたが気のせい? 2曲目はアルトだというが、はてさて。アルトのネックに直接息を入れて、それを機械的に加工したものだろうか。わからん。結局、1曲目と同じような方法論による演奏だ。でも、とにかくめちゃめちゃおもしろい。なんやねんこれっ! と叫びたくなるし、この先どうなるのか興味津々になる。これもなあ、6分37秒あるのだが、ちゃんと聴き入ってしまうのだ。この2曲でかなり驚いたので、もうなにが来ても驚かんで、という気持ちで3曲目。これもアルトソロだというが、アルトのキーを開閉するときのタンポの音や、変則的な奏法による断片的な音、ホイッスルのような音などがコラージュのように組み合わされる。阿部薫を連想させるような「間」の使い方。でも、1、2曲目に比べると、いちばんちゃんとした(?)サックスソロか。この時点で私はすっかり感心してしまい、すでにファンになっているな俺、と思った。4曲目は息を吹き込んだり舌を使ったりしてパーカッシヴな効果を出しているのか……それすらわからない、正直、これがサックスによる演奏だとはだれも思わないだろうインプロヴィゼイション。超微妙で微細なニュアンスの変化だけで10分40秒。すげー、というか、しゅげー、というか呆れてものがいえないぐらいスタイリッシュでかっこいい。それにしても、さっきも書いたけど、これは演奏者のセンスのゆえなのか、とにかく飽きないで聴いてられるんですよねー。どえらいことである。5曲目はまたチューブだが、まるでヘリコプターのプロペラが眼前で回っているような生々しい迫力ある音だ。これまた、なにがどうなっているのかさっぱりわからんが、このあたりになるとそんなことはどーでもいいように思えてくる。とにかく、おもろい音が奏でられていて、それをおもしろく聴けている。それで十分なのだ。なんだかすばらしいパーカッションソロを聴いているような気分になる。この曲が本作中12分43秒で最長だが、途中3回切れ目があるので、実質は4パートの「組曲」というべきか。ラストはバスクラソロ。右チャンネルと左チャンネルと別々のひとが同時に吹いているような感じになっている。パーカッシヴな演奏だが、やはりバスクラらしさも十分感じられる。聴き終えて、これは傑作ではないのかと思ったが、やはりそれを大声で叫ぶ自信はない。でも……すごいんちゃうかなあ、これ。