「SLAVES MASS」(WARNER BROS.JAZZ MASTERS 8122−73752−2)
HERMETO PASCOAL
よく知らないが、きっと万人が周知している名盤なのだろう。そうに決まってる。とにかくすばらしすぎる。音楽の喜びというものがここに凝縮している。モーダルなものとラテンリズムがベースにあるのだが、そのうえに乗っているのは、「パスコールの世界」としか言いようがない音楽。この演奏を聴いたら、だれでも感動して踊って涙して笑いだすのではないか。どの曲も、ありえねーっ! というぐらい「聴き手を楽しませる」精神にあふれていて、もちろん演奏する側のよろこびも伝わってきて、これ以上のものはない。どういう音楽であるかは聴いてもらうしかないが、たぶんジャズファン、ロックファン、ラテンファン、フォークファン、クラシックファン……音楽好きであれば、どんなジャンルを中心に聴いているひとでもこの音楽はズドンとくるのではないかと思う。世界中の音楽の要素をぶちこんで、パスコールソースをたっぷりかけたような、楽しい楽しい楽しい楽しい演奏。聞き惚れます。人生の至福の瞬間です。天才という言葉はむやみに使うべきではないと思うが、さすがにこのひとについては「天才」と呼んでいいでしょう。すばらしい。曲ごとの変貌ぶりは「バラエティ豊か」などといった表現では語れぬほどの超人的なもの。しかも、なにやらせてもすげーセンスとすげー演奏クオリティなんだよなあ。ある意味、理想の音楽だ。ローランド・カークのように、デューク・エリントンのように、アート・アンサンブルのように、そしてポール・モーリアやジョン・ウィリアムスやヘンリー・マンシーニのようにすごいジジイだ。脱帽。