big john patton

「ALONG CAME JOHN」(BLUE NOTE RECORDS ST−84130)
BIG JOHN PATTON

 ジャケットがめちゃくちゃかっこいい。ジョン・パットンというとジミー・スミス、マクダフなどなどとはちょっと違って、ラリー・ヤングとまではいかないがシリアスな、モーダルな演奏をするひとのようなイメージがあり、しかも、本作は2テナーといってもひとりが「ホンクもするけど、ジャズ系のアルバムではちゃんと吹く」フレッド・ジャクソンと、「オルガン奏者と多く共演しているが心はコルトレーンかも」なハロルド・ヴィックなので、あまり阿鼻叫喚の大ブロウ大会は期待できないなあ、まあ、時代も時代だからなあ、と思って聴いてみた(めちゃくちゃ昔の話ですよ)。そのときは、うーん……テナーがせっかくふたりもいるんだからもっとガリガリ吹いて盛り上げたらええのに、と思ったが、今にして思えば、ふたりのテナーも結局はパットンのオルガンを引き立てる役なのだ。パットンのオルガンはジミー・スミス的なピラピラピラ……というような軽さがなく、ずっと重く、岩のようにごつごつしている。しかも、オルガン奏者にありがちの「これ見よがし」のところがなく、やりたいことをやっている感じだ。一応、ここではレーベルというか時代の要請に応えてファンキーだが、フレーズというより音の分厚い重ね方で表現している感じで、細かいフレーズの方は、ふたりのテナーにおまかせ……というような雰囲気である。A−1はジャズロック風の8ビートのブルース。こういった演奏ではおなじみの「曲とはいえん!」ということを楽しもうぜ、的なリフ。先発テナーがだれなのかはちょっとわからないが、たぶんこの感じからいうとフレッド・ジャクソンではないでしょうか。シンプルな表現。そして、グラント・グリーンのギターがぶっとい音色で歌いまくり、パットンの重い、重い、重いオルガンが響き渡る。黒々と沈み込むような鍵盤が見える。ベン・ディクソンのドラムもめちゃくちゃ単純なのに重い。最後の最後で2テナーがグロウルしはじめるところでフェイドアウト。A−2はスローブルーっぽいアレンジになっているが、じつは歌もの。これもめちゃくちゃヘヴィ級である。フィーチュアされるパットンのソロは重油のような黒さ、重さをもって迫ってくる。2テナーのアンサンブルもそれを煽る。かっこいい。A−3は軽快なシャッフルのブルーズだが、ちょっとひとひねりしてある(7小節目から10小節目にかけてのあたり)。グリーンのギターがゴツゴツと歌い、ハスキーな音色でのパットンのソロもこのひとなりのノリノリでかっちょいい。つぎに出てくるテナーはだいたいずっと同じことしか吹いていないのだか、これはこれでかっこいい。だれでしょう。フレッド・ジャクソン? 最後は2テナーのアンサンブルになってエンディング。B面に移りまして、B−1はタイトル曲で、オルガンベースも軽快なノリノリの曲。ファンキーというより牧歌的か。12小節ではあるが、サブドミに行かない変形ブルース。こうして聴いてると、パットンの好みがなんとなくわかってくる。いわゆるソウルオルガンみたいなことから脱却したいのではないか。テナーソロは、たぶんフレッド・ジャクソンだと思うが(ほぼ音色だけで判断しているので間違ってる可能性大。よそで言わないでね!)、めちゃくちゃかっこいい。B−2はノリのいいミディアムのブルーズで、パットンのソロが炸裂する。このひとはこういう曲をやっても重いなあ。ソウルジャズ系のオルガンなんてヤン・ハマーとかを除いたらみんなおんなじでしょ、というような意見をあっさり排除する。テナーソロもだれだかわからんけど(これもフレッド・ジャクソンのような気がするのだがどうなんだろう)すばらしいし、同じフレーズを繰り替えして盛り上げるグラント・グリーンのソロも堂に入ったものであります。そのあとに出てくるテナーは(たぶん)ハロルド・ヴィックじゃないのかなあ。音色とフレーズから考えた結論であって、間違ってる可能性大です)。オルガンの豪快なガツーン! というソロもかっこいい。ラストの「豚の脚」という変なタイトルの曲(ビッグフットの洒落なのかもしれない……)。はまたまたシャッフルのブルーズで、たぶん先発ソロはハロルド・ヴィック。パットンのオルガンを挟んで再びのテナーはたぶんフレッド・ジャクソンか? かなりイケイケな感じの演奏で聴いていて拳を突き上げる感じ。そのあとのパットンのソロは重いが軽い。うーん、傑作だと思います!