「PET BOTTLE NINGEN」(TZADIK TZ7802)
PET BOTTLE NINGEN
「ペットボトル人間」というのはすげー名前だが、これがアルバムタイトルなのかバンド名なのかわからんのだ。まあ、アルバム名であり、バンド名ということなのだろうが、それにしてもインパクトのあるネーミングだ。内容も、名前に劣らずインパクトがあり、ドラム〜ギター〜アルトという3人組なのだが、スピード感、テンション、ぐちゃぐちゃさ、正統さ、小気味よさ、かっこよさ……どれをとっても超一級。いやー、感心というか感動というか。ドラムもギターもすごいのだが、やはり北海道出身というこのアルト、吉田のの子というひとにどうしても耳がいく。音もいいし、めちゃむずかしいリフをばっちり吹くし、ぐちゃぐちゃなフリーも思い切りよくパワフルにこなすし、すばらしいです。こないだめちゃめちゃ感心した「秘宝感」のアルトの纐纈雅代さんといい、女性若手アルトには逸材が多いなあ。ニューヨークのアングラなシーンの臭いがぷんぷんするアルバム。こういう、ぴりぴりするような刺激的な演奏って、ほんと、聴いてると「仕事せな!」という気分にしてくれるのだ。コンポジションもすごくいいです。あ、そうそう、内ジャケットの絵も最高。なお、三人とも対等で、だれのリーダー作でもないようだし、便宜上だれかのところに入れるのも無理なので、バンド名で項を立てた。
「LIMITED CD−R FOR JAPAN TOUR 2014」
PET BOTTLE NINGEN
2014年の日本ツアーのための物販用CD−R。内容は2014年のアメリカツアーでのライヴ録音。従来3人だったメンバーに、ヴォイス(スロートと表記してある)とライヴエレクトロニクスのチャック・ベティスというひとが加わって4人による演奏だが、その後の日本ツアーにはこのひとは来ず、オリジナルメンバーだけの来日だったので、このCD−Rでしかこのひとの音は聞くことはできない。演奏は、サックスもオフだし、ドラムもばしゃばしゃいってるし、録音は最上とはいえないが、その分なんだかいかがわしくも臨場感のあるいきいきとした空気がばっちり捕えられており、ベースのいないスカスカ感が、正規アルバムよりもずっと出ていて面白い。新メンバーの参加は大正解で、変なバンドの変さにますます磨きがかかっている。といっても、従来からそうであったように、このバンドはコンポジションとアレンジを即興と同じぐらいの比率で重要視しており、キメキメ部分のかっこよさもこれまでどおり。聴いていると、びしっときまるところでは素直に「カッコイイ!」となるし、なにより全員の音楽に対する意欲を痛いほど感じて、こちらもやる気が出る。変拍子のかなりむずかしい曲が多いのに、みんな(当たり前かもしれないが)楽々とこなしていてたのもしい。吉田野乃子のサックスはあいかわらずのびのびとして、かつ鋭く、音色やピッチ、アーティキュレイションのすみずみまで気配りができているが、同時に大胆で、こういうのは「良いサックス奏者」に絶対に必要な要素ではないかと思う。ベースがいないせいで強調される独特の浮遊感を、ライヴエレクトロニクスがいっそう際立たせている感じもあり、今後も目が離せないが、吉田の帰国とともにグループとしての演奏回数は減るんじゃないかなあと勝手に心配したりして。