sammy price

「BOOGIE AND JAZZ CLASSICS」(BLACK & BLUE RECORDS BB980.2)
SAMMY PRICE

 このアルバムは例のブラック・アンド・ブルーの「ザ・ジャズ・デフィニティヴ・ブラック・アンド・ブルー・セッションズ」というシリーズのひとつで、LPを再編集してCD化したようなものが多いと思うが、ブラック・アンド・ブルー盤は学生のころ食費を削っても目についたら買ってたのでけっこうLPは持っている(なにしろコブ、ジャケー、テイト、ロックジョウ……とブロウテナーの宝庫のようなレーベルなのだ)。このアルバムは本来なら私としては買わんやつなのだ(テナーが入ってないからね)。でも、中古で目につき、なにげなーく買ったら、これがめちゃめちゃ良くて、以来愛聴しまくっている。サミー・プライスとドラムのJ・C・ハード(このひとも名手。4曲目「サンデイ」のブラッシュ最高)のデュオだが、この編成がばっちりなのだ。ベースがいないせいで、サミー・プライスの左手の凄さが際立つし、ハードのドラムが小気味よくピアノをサポートすることによって、プライスがスウィングしまくるのだ。それに選曲がいい。「マイ・ブルー・ヘヴン」にはじまり「セント・ジェイムズ・インファーマリー」「ジー・ベイビー」……と続き、ラストは「エイント・ミスビヘイブン」で締めくくるという全15曲。これは聴きたくなるよなー。内容はもう涎垂れまくりで、美味しい、美味しすぎる演奏の連続。ひたすら楽しくかっこいい。プライスはブギウギ専門のピアニストではなく、普通のジャズピアノもストライドもすごいが、本作の後半はブギウギ中心で(ほとんどプライスのオリジナル)、ピアノブギをやってもめちゃうまい。似たような演奏がひとつもないのもすごい。どの演奏にも「顔」というか特徴があり、引き出しの多さにも驚く。というわけで、大好きなアルバムなのです。サミー・プライスは長生きしたひとだし、レコーディングキャリアもなので作品数も多いが、けっこう代表作といってもいいんじゃないかと勝手に思ってる(そのへんのことはよく知らない)。もしどこかで見かけられたら、ぜひ。ブラック・アンド・ブルーにはもう一枚、管の入ったやつもあるはずだが聴いたことはない。なお、プライスはボーカルも上手いが、本作はピアノに徹していて歌はない(そこも本作を好きな理由のひとつ)。それにしても、ジャケットの写真が録音時のものなら、しょぼいアップライトピアノで録音したことになる。ブラック・アンド・ブルー、ちゃんとグランドを用意せえ。