「I’M IN THE WRONG BUSINESS!」(ALLIGATOR RECORDS ALCD4757)
A・C・REED
A・C・リードといえばアルバート・コリンズだが、本作ではコリンズではなく、スティーヴー・レイ・ヴォーンやボニー・レイットがその役を務めている。リードはサックスとボーカルを全曲担当していて、歌もめちゃうまい。コリンズよりずっと上手い。私も生で見たことがあるはずなのだが、正直、全然覚えてない。このアルバムも当時LPを購入したのだが、売ってしまった。なぜかというと、私はブルース系のテナーには、当時はホンカー的な演奏を期待していて、だから、歌の合間にちょろっと吹くだけのリードやエディ・ショウはどうも面白くなかったのである。自分のリーダー作なのだからもっとテナーを中心にブロウしろよ! と思っていた。ブルースとかR&Bのテナーってそういうもんだよ、そこがいいんだよ、と教えてくれるひともいたが、大きなお世話。わしゃボーカルなんか聞きたくないのである。リー・アレンを見よ。伴奏でも、ちゃんとこちらを満足させてくれる演奏をするではないか。……というようなことで売っぱらってしまった本作だが、最近ふとした心境の変化でCDで買い直してみたら、いやー、驚きました。めちゃめちゃ気に入った。こういうことがたびたびあるから、怖くて音楽評論などできない。いや、音楽にかぎらずなんでもそうだ。私は自分の耳は馬鹿だと思ってるから、今回のように、時間を置いて聞き直すと評価がコロッと変わるということはけっこうある。いや、時間を置かなくても、酔っ払ってるときに聴くとすごくよく聴こえたのが、素面で聴くとショボく思えたり、その逆もあるし、ジャズ喫茶の凄い音質で大音量で聴くとすばらしい演奏に思えたのに、買って家のしょぼい装置で聴くとがっかりだったり、評価がかわることは多い。本作も完全にそうで、今聴くと傑作としかいいようがないが、あのときはとにかくテナーが主役でないとおさまらなかったのだろうなあ。一曲目からめちゃかっこいい。ブルースナンバーもソウルもR&B風の曲もあるが、キャッチーなメロディー、シンプルだけどかっこいいアレンジ、モダンなリズム、ファンキーなバックコーラス、どれも秀逸なギターソロ……そして、主役リードのボーカルとテナーはどれも完璧だ。基本はボーカルなので、テナーソロは間奏だけだが、それでもこうやって聴き直してみると、案外たっぷり吹いているし、どのソロも短いなかで言いたいことを言い尽くして感のある見事なもの。フリージャズや即興ばかり聴いて疲れたとき、ブルースを聴くなら、これぐらいのやつがちょうどいいなあと思ったりしたので、人間変われば変わるもんです。まあ、一曲ぐらいテナーを大フィーチュアしたインストもあってもよかったんじゃないかと思うけど、こんだけ吹いてくれたら納得。リードは、うろ覚えだけど、グルグル巻いたシールドのついたテナーを吹いている写真のアルバムもあったような気がするが、あっちも買い直してみようかなーと思いました(調べてみたら、「テイク・ジーズ・ブルース・ショウヴ・エム」というルースターのやつでした)。いやもう、傑作といっていいんじゃないでしょうか。