「TWENTY MINUTE CLIFF」(OKKADISK OD12045)
TRIAGE
デイヴ・レンフィス(レンピスかな?)は、言わずとしれたヴァンダーマーク5でのマーズ・ウィリアムズの後釜的アルト奏者(テナーとかも吹く)。個人的には、マーズ・ウィリアムズがあまりにすごいプレイヤーなので、後釜のレンフィスに対する点はどうしても辛くなる。しかし、リーダー作はどうか。ということで、出てすぐに買って、聴いてみた。うーん……アコースティックなピアノレストリオというコンセプトにおいて、自身のアルトもがんばってるし、曲もなかなかいい曲を書くのだが……古くさい。私は、「古いタイプのフリージャズが好きだ」と常々公言している人間だが、私でさえ、「これは古いわ……」と感じさせる。いかにもオーネット・コールマン的な曲調、ソロ、展開……うーん、早い4ビートに乗ったソロや過激な絶叫タイプのソロ、叙情的なソロ……どれをとっても、あと一押しか二押し足りない、物足りない、燃焼不足のもので終わっている。手堅く、そつなくやりましたという感じか。彼の師匠格の(と勝手に決めてはいけないが)ヴァンダーマークでも、そういう演奏はたまにあるが、レンフィスはヴァンダーマークの小型版であり、悪い点ばかり見習っている感じがするぞ。もっともっともっともっと「とことん」やってほしい。逸脱してほしい。楽器が壊れんばかりに吹きまくってほしい。グループエキスプレッションを破壊するぐらいに自己主張してほしい。音色の個性ももっと磨いてほしい。全体に説得力が足りないし、なんというか……うますぎる。つるつるっと吹いてて、心に残らない感じだ。このままじゃ、ちょっとうまいだけのふつーのアルト吹きで終わるぞ。がんばれ、デイヴ・レンフィス。行きがかり上、応援してまっせ。――でも、二枚目は買ってないんです。
「BACK TO THE CIRCLE」(OKKADISK ODL10008)
DAVE REMPIS/TIM DAISY
ヴァンダーマーク5のレギュラーアルト吹きデイヴ・レンピスと、これもヴァンダーマーク5のドラマーティム・デイジーのデュオ。何度も書いていることだが、デイヴ・レンピスはあまり好きではない。ソリストとしては、がんばってはいるが個性に乏しく、凡庸だとさえ思う。前に聴いたトリオによるリーダーアルバムも、がんばってはいるがいまいちな感じだった。それなのにどうしてまた本作を購入したかというと、私の好きな形式、つまりドラムとのデュオだから。このセッティングでよくなかったら、ほんまにあかんのだ。で、さっそく聴いてみると……うーん、あいかわらず理屈っぽい吹き方をするなあ。ある程度パッショネイトである程度フリーな感じなのだが、きっちりしたものにも未練があってひじょーに中途半端に聞こえる。悪くはないし、がんばっているし、そんじょそこらの凡百のアルトに比べるとずっといい、とは思うが、私の求めているものはこういう演奏ではない。この「がんばってはいるが」というあたりが、かえって嫌なのかもしれない。もっとラフでタフな部分もあってもいいのでは? おまえは単に、ギャーギャーフラジオで叫んでいるような演奏が好きなんだろう、と言われたら返す言葉がないが、そういうのとは微妙にちがう。なんというか……分別くささが嫌なんだと思う。一皮むけてくれたら……とヴァンダーマーク5にマーズ・ウィリアムスの後釜に入って以来、ずっと言い続けてきたが、いまだにむけない。これが限界なのか、それともこういうのを「個性」として確立していくのか。よくわからないが、たぶん次作は(よほど共演者に興味をひかれないかぎり)聴かないと思う。ドラムのティム・デイジーは、ヴァンダーマーク5のドラムとしては前任者よりはずっとずっとずっといいと思うが、やはり管がよくないと。でも、冷静に考えて、この演奏、サックスがアルトではなく、テナーのひとだったら、「うん、すごくいい」と気に入ってしまったのではないか、という気もするし、いやいや、レンピスは持ち替えでテナーを吹いてる曲もあるから、やっぱり演奏自体が私の肌にあわんのだ、と考えなおしたり……とにかくいろいろと考えさせられる一枚ではある(買ったときに聴いて、今回も3回聞きなおしたのだが、印象はかわらなかったし)。デイブ・レンピスよ、きみが一皮むけないと、ボントロも抜けたヴァンダーマーク5はたいへん困ったことになってしまうのだよ。たのむよ。
「CYRILLIC」(482MUSIC 482−1064)
DAVE REMPIS/FRANK ROSALY
ヴァンダーマーク5の、という注釈がすでに不用のものとなりつつあるデイヴ・レンピス。上記では「あまり好きではない」と書いているが、そののちどんどん好きになり、今では彼が入っていると思わず買ってしまうほど好きになった。リーダーアルバムはどれもなかなかよいし、ジェブ・ビショップグループでの演奏もよくて、今回もドラムとのデュオということで非常に期待していた。最初聴いたとき、うーん、うまいことはめちゃめちゃうまいけど、スリルのない、予定調和的な演奏かもな、という印象を持ったが、もう一度聴き直してみると、そんなことはなくて、大づかみのスリルはないが、ざっくりした試聴では聞き逃してしまうような微細な部分にたっぷりとスリルがあった。魚の骨にもいっぱい身がついているようなものか。いや、このたとえは全然ちがうな。まあ、とにかくコルトレーン〜ラシッド・アリの直系的というか、ひじょうに「ジャズ」的な演奏であり、レンピスもフリーに攻めるだけでなく、モーダルなフレーズをばんばん吹きまくり、テクニシャンであることも見せてくれる。こういうとこ、もっとヴァンダーマーク5とかでも出していけばいいコントラストになるのに。レンピスは、ヴァンダーマーク5ではリーダーとの対比からか、アルトが主で、私もアルトがメインでテナーやバリサクなどに持ち替えるひと、という印象だが、ときどき吹くテナーがすばらしいのである。本作品でもテナーの出番はさほどないが、その曲がいちばんよかった。シャープだが芯のある音色での熱いブロウは気持ちいい。するするっと聞けますが、立ち止まって、真剣に聴くと良さが際立つアルバム。