eric revis

「PARALLAX」(CLEAN FEED CF266CD)
ERIC REVIS

 編成だけみると、ふつうのワンホーン+ピアノトリオに思えるが、じつは変態というアルバム。どの曲も短い(いちばん長くて6分13秒)。1曲目は静かな弓弾きではじまったかと思うと、すぐにノイズのようになり、そのまま終わっていくというベースソロだけの演奏。2曲目は4人による即興。非常にオーソドックスな感じだが、かっこいい。ドラムとピアノが怒濤のごとく暴れまくる。さすがナシート・ウェイツ。3曲目は、ピアノの重いリフで始まる。異常な行進曲。変拍子のようだが3+3+2になってるだけ。テーマはクラリネットにテナーをダビングしているのか? ソロはクラリネットでヴァンダーマークが狂う。これもかっこいい。4曲目はジャズ。シャープにドライブするドラムとベースに対して、ピアノが合ってないような合ってるような危なげなソロをして、それがかっこいい。ヴァンダーマークはテナーで、こういう4ビート物のときにいつも吹くようなモンク的というかドルフィー的な跳躍の多いソロをする。ピアノのリフに乗ってドラムが叩きまくり、テーマに戻る。5曲目はベースの弓弾き主体でフリーっぽくはじまり、次第にほかの楽器が加わるが、そのノイズのような音塊をバックにして、ヴァンダーマークがひとり、淡々とテナーでテーマ(ファッツ・ウォーラーの曲らしい)を吹くという、一種の趣向。そこから一転してオールドジャズのような演奏になる。なんなんだろうね、これは。6曲目は、ピチカートによるモダンジャズのベースソロのような即興。超短い。7曲目は最近の(というのも変だが)主流派ジャズ的な複雑なテーマの曲……というかアドリブパートがないのだ。しかもマイケル・アティアス(?)というひとの作った、コンポジションだけの曲。ヴァンダーマークはけっこう苦しんでる感じ。8曲目は本作中一番長尺の曲で、ドラムソロではじまり、クラリネットを中心とした、インプロヴィゼイション風の演奏になる。ベースの無伴奏ソロ(ピチカート)→カルテットによる即興→クラリネットの無伴奏ソロ→カルテットによる即興→ピアノの無伴奏ソロ→カルテットによる即興、という趣向の曲。ラストはヴァンダーマークが悲鳴のようなクラリネットの高音で決める。9曲目は混沌とした即興パート(ベースは弓弾き、ヴァンダーマークはクラリネット)からリズミックな変拍子(のようだが、33334の16なので実は普通なのだ)をしつこくしつこくやるという曲。10曲目はピアノが最初小刻みなモールス信号のようなリズムを弾き、ヴァンダーマークはテナーを吹く、4人がバラバラのような、合っているようなノリがずっと続く。ものすごい躍動感が感じられる演奏だが、変態的でもある。テナーソロに続くピアノソロもかっこいいが、かなりややこしい感じの曲で、クレジットによるとジェリー・ロール・モートンの曲らしいがほんまかなあ。11曲目は、ドラムとベース、ピアノによる力強くゆったりしたリズムに乗って、テナーがテーマを吹くブルース。ヴァンダーマークがこういうまともなブルースを吹くのはかなり珍しいんじゃないかと思うが、けっこういけます。たぶん、こっちがジェリー・ロールの曲で、クレジットがまちがっているのだろう。12曲目はたぶん純粋なインプロヴァイズ。ヴァンダーマークはクラリネット。全員が小技を続けるうちに盛り上がっていく。13曲目は、ベースのピチカートによるソロのバックでアルコっぽいノイズが響く短い曲。あー、おもろいやん。思っていたような、ブリブリした怒濤の即興、ドラムとベースがびしばしにインタープレイして、テナーがギャーッと吠える……みたいなものとはまったくちがっていた。傑作。