sam rivers

「A NEW CONCEPTION」(BLUE NOTE RECORDS TYCJ−81055)
SAM RIVERS

 ブルーノートなどにサム・リヴァースが残した音源では、このひとの凄さはなかなかわからんような気がする。でも、このアルバムはめちゃ好きです。リヴァースはその独特のくねくねしたフレージングについて好き嫌いがわかれるのかもしれないが、音色の説得力を排した(排したというと言いすぎかもしれないが)思索的といってもいいその演奏は、たとえばジョー・ヘンダーソンとも共通するような(フレーズ自体が共通するという意味ではない)ジャズのアドリブにおける「フレージング」というものを冷徹に見据えたものだと思う。本作では、前衛的な演奏もバリバリ行っていたリヴァースのスタンダード集であって、その音色や音使いがリアルな録音で捉えられており、垢の付いたスタンダードのなかから新しいなにかを掘り出す作業(リー・コニッツみたいですね)がスウィンギーでオーソドックスなリズムセクションとともに粛々と行われている。ときにヤバい領域に踏み込みそうになりながら、シリアスにおのれのスタンダードを演奏するリヴァースのストイックな姿勢には感動する。スタンダードといってもかなりぐちゃぐちゃっとしたもので、そのあたりが聴きどころであります。最近、リヴァースのロフト時代の音源などが発掘されて、このひとの「マイルスバンドに二カ月いたひと」的な認識は改まっていると思うが、リヴァースがテナーのスタイリストであり巨人であったことは本作でも感じることができるような気がする。朴訥なソプラノやフルートもいいですね。全体を覆うテンションはこの時代ならではのものであり、ドルフィーやオーネットを連想せずにはおれない。「フリージャズの傑作」とはっきり言ってもいいんじゃないんですかね。ラスト曲のフルートの凄みはなかなか体感できないです。傑作。