「WE INSIST!」(CANDID RECORDS SMJ−6169)
MAX ROACH’S−FREEDOM NOW SUITE
ある事情で(といってもたいした事情ではなく、小説のネタに使った)ものすごく久々に聞き返してみたが、いやー、やっぱり傑作でありますなー。うちにあるのは高校生のときに買ったLPだが、このジャケットの迫力はCDサイズではかなり減衰することはまちがいない。今聴いてもすごく斬新で新しく、こう、なんというか、古びてないんですね。それは、本作がアフリカに根差したリズムとモードを使っているからで、いわゆるハードバップとかビバップの文体というか語法を使っていない。中期コルトレーン以降の音楽、たとえば「インプレッションズ」とか「至上の愛」のような音楽の系譜に属するものなのだ。そして、それをスウィングスタイルで、テナーサックスのゴッドファーザーであるコールマン・ホーキンスが演奏しているというのもかなりおもろい状況だが、ホーキンスはさすがの貫録でまったく違和感のない、豪快なブロウを見せている。変拍子のグルーヴが多いという意味では、きっとサンプリングネタとかDJによって取り上げたりされているのだろうと思うが、マックス・ローチとアヴィ・リンカーンの「訴える力」は時空を超えて伝わる。こういうのを、プロテストジャズだとかいって、カテゴリーに押し込めてしまうのはあまりにもったいない話で、プロテストという気持ちをきっかけにして生まれたこの凄まじいサウンドをきっちり味わい、純粋に音楽として受け止めつつ、その奥に流れる自由への渇望や抗議の意思をもひっくりめて、「すげーっ」と叫ぶのが私の鑑賞の仕方なのであります。この音楽とフリージャズとどこがちがうんだ、と言われたら、すいませんまったく一緒ですと答えるしかない。ビートとかグルーヴとかアンサンブルとかキラーフレーズとかそういった側面からしか音楽をとらえていないと、このアルバムもただのサウンドにしか聞こえなかったりするのかもしれないが、この演奏はそういった聴き方を突き破るだけの力を備えていると私は信じております。心から叫ばせていただきます。めっちゃかっこええ!と。なお、うちにあるのはLPだが、現行盤はオリジナルとは曲順が違っていて(マックス・ローチの指示によるものらしい)、そのせいで裏ジャケットの曲順表記が結果的にまちがっていることになっているわけだが、オリジナル信仰もほどほどにしないと、購入者がまちがった情報を覚えることになるよ。オリジナルに似せてるだけでオリジナルじゃないんだから、そんなんどうでもええやん。大事なのはなかに入ってる音楽についての情報を正しく伝えることが第一義でしょう。結局、ただしい曲順は、日本語ライナーを見ないとわからないので、日本語ライナーを捨ててしまったら終わりなのだ。まあ、CDはそんな馬鹿なことになっていないことを祈る。