shorty rogers

「SHORTY ROGERS COATS THE COUNT」(SONY MUSIC LABELS INC. SICP4272)
SHORTY ROGERS

 ジャズ喫茶で一回か二回聴いただけのアルバムだが、廉価版が出たので買ってみた。正直、こういうジャズにはぼ関心がないのだが、ときどき突然、それではいかん、世評の高い名盤なるものはちゃんと聴いておかなくては! という意欲(?)が意味なく勃興することがあって(たいがいはすぐに消えるのだが)、これもたぶんそういう衝動に駆られたのだと思う。ウエストコーストジャズの名手たちがつどって、カウント・ベイシー(オールドベイシー)の曲に新しい解釈をほどこした……的なコンセプトなのだと思うが、そもそもオールトベイシー(こういう言い方もどうかと思うが)の曲は、ビッグバンドといってもリフ主体のシンプルな音楽であって、それをぐだぐだと凝ったアレンジにしてしまっては、もともとのスピリッツというか根源的なものが失われてしまう。そこで、本作もビッグバンドではあるが非常にシンプルなアレンジになっている。そして、そこで思うのは、ああ、ユニゾンとかリフとかいうものは強いなあ、ということだ。キラボシのごとき名手をそろえているが、やっていることはとてもシンプルでわかりやすい。わかりやすすぎるといってもいいぐらいだ。そこにすばらしいソロが乗る。ハリー・エディソンはべつとして、メイナード・ファーガソン、コンテ・カンドリ、ハーブ・ゲラー、バド・シャンク、ビル・ホルマン、ジミー・ジュフリー、ズート・シムズ、ボブ・クーパー、マーティー・ペイチ、シェリー・マン……といったひとたちがソロにアンサンブルにと活躍する。ソロはどれも極上品で、はっきり言って面白くないわけがない。名盤である。ただ、惜しむらくはそれを聴いている私という人間が今、こういうタイプのウエストコーストジャズを愛でる気分ではなかったようだ。オールドベイシーをここまで洗練(?)させると、同時に失われるものもあるわけで(黒人音楽としてのうねりとかいい加減さとかくどさとかクサさとかそういうものです)、たぶん私はそっちのほうが面白いと思っているのだろう。これは好みだからどうしようもないです。おまえにはウエストコーストジャズを語る資格がないと言われたら、はい、そうです、と言うしかないですね。ベイシーは、デッカのころもめちゃくちゃ好きなのだが……。