adrian rollini

「SWING LOW」(CHARLY RECORDS CD AFS 1030)
ADRIAN ROLLINI

 当時としてもかなり珍しかったであろうバスサックス奏者。ビックス・バイダーベックとよく共演していたひとらしいが、あまり名前に憶えがない。しかし、経歴を調べてみるとどえらい大物だということがわかった。こういうアーリージャズのことはほんと知らんのだよなー。まあ、ほかのジャズも知らんけど。とにかくバスサックス奏者として一世を風靡し、その後、ヴィブラホンを演奏の中心にするようになったが、ピアノも弾くし、なによりニューヨークのプレジデントホテルに「エイドリアンズ・タップ・ルーム」という自分のジャズクラブを持ち、そこのオーケストラのリーダーとして毎晩演奏していたというのが大きい。本アルバムに収録されている21曲のメンバーを見ていると、ジャック・ティーガーデン、ベニー・グッドマン、ジョージ・バン・エプス、ジョナ・ジョーンズ、バニー・ベリガン、バディ・リッチ、ボビー・ハケット……といったそうそうたる名前が並ぶ。それがすべてエイドリアン・ロリーニ・アンド・ヒズ・オーケストラという自分の名義での吹き込みなのだからすごい。演奏もすばらしくて、バスサックスという馬鹿でかい楽器を、じつに軽々と吹きこなしている。しかも、音がめちゃくちゃいい。きちんと基礎ができているひとだと思う。渋くて芯のある音で朗々と演奏されるバスサックスは、あの鈍重な楽器であることを忘れてしまうほど軽快だ。しかし、ロリーニは途中から主奏楽器をバスサックスからヴィブラホンに変えたらしく、残っている映像の多くのヴァイブを弾いている(これも上手い)。このひとのオーケストラは、本当にオーケストラで(変な言い方だが)、ストリングスが6人ぐらいいて、ベースのかわりにスーザホンがいて……たいへんな大所帯である。これをかなりのあいだ維持していたのだから、すごい。このアルバムはバスサックスがたっぷり聴けるので低音愛好家のかたはぜひ。